バージョン
ここまで、HDRシステムをオーディオリミッターのように表現してきました。HDRウィンドウの上端が、最大サウンドのレベルを厳密に追うので、 図13「HDRスレッショルドの効果」に示す通り、HDRスレッショルドより上の全てのサウンドは個別に再生すると、同じアウトプットレベルとなります。前述の通り、HDRは、サウンド同士の相対的なダイナミックレンジを増加させる印象を与えるものの、絶対的なダイナミックレンジは狭くなります。この絶対的なダイナミックレンジをある程度、取り返すには、HDRリミッターをHDRコンプレッサーに転換させます。これには、有限の、より小さい圧縮率(レシオ)を設定します(デフォルトの圧縮率は無限)。圧縮率によって、HDRウィンドウが最大サウンドをどれだけ厳密に追うのかが決まり、サウンドのレベルとHDRスレッショルドの差を用いて算出されます。図15「HDRレシオの影響」は、圧縮率の影響を示しています。なお、圧縮率が無限でない場合に、大きいサウンドがHDRウィンドウを超過してしまい、HDRシステムから0dBFSより大きくアウトプットされる可能性があります。HDRバスや、シグナルパスの下流にある他のバスのボリュームを下げて、ヘッドルームを確保してください。
このサウンドのインプットレベル(左のグラフ)は+24dBで、100:1、4:1、2:1のレシオで、HDRバスで再生されます。対応するアウトプットレベルとして、0dBFS、+6dBFS、+12dBFSが、右のグラフに表示されます。別のサウンドは、インプットレベルが0dBで、-24dB、-18dB、-12dBのダッキングが行われます。2:1の時、スレッショルドより上のエネルギーの半分だけがHDRウィンドウを上に移動するのに使われ、その結果、他のサウンドが-12dBだけダッキングされます。なお、レベル差分の24dBは、常に維持されます。また、小さいレシオを用いると、ウィンドウ上端より上にサウンドが出る可能性があり、0dBFSを超えてしまうので、バスやバスの親のボリュームを下げて、充分なヘッドルームを確保するべきです。