ユーザーが、HDRレベルと、フルスケール(機器のスケール)の間の変換機の役割を担うための、バスを1つ、Wwiseで選択しておく必要があります。このHDRバスが取り込むインプットレベルが、Wwiseでユーザーが設定するロジカルレベルです。このため、HDRバスにルーティングするサウンドのボリュームを、0dBよりもはるか上に設定することができます。重要なのはHDRウィンドウにおけるサウンドの位置だけで、その位置は再生中のサウンドに合わせてHDRバスがダイナミックに移動させます。つまり、HDRバスは、オーディオリミッター・コンプレッサーのコントロール機能と似たものを提供することで、ロジカルリミッター・コンプレッサーの役割を果たします。HDRウィンドウが時間の経過とともにどう移動するのかをコントロールするための、非常に短いアタックや、ユーザーが設定できるリリースがあります。また、スレッショルド(Threshold)もあり、HDRウィンドウが移動できる範囲の最低ラインとみなせます。
dBSPLの活用 | |
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これまでの文献で、多くのHDRオーディオシステムのインプット側のボリュームレベルが、音圧(dbSPL)で表現されています。dBSPLは基準値(0dBSPL)が人間の聞き取れるスレッショルドに相当する、デシベルを使った測定方法です。このSPLという概念はWwiseに存在せず、その理由は、導入すると不要に複雑になり、インターフェース上で邪魔となる上、システムが使いやすくなるわけでもないためです。その代わり、インプット側の基準値を任意値としてあるので、ユーザーが定義できます。dBSPLを単位として使いたい場合は、サウンド構造のボリュームを、直接、正のdBSPL値に設定します。ただし、Wwiseのボリューム用スライダの上限が+12dBなので、基準値を別途、選択して、希望するSPL値から引き算をして対応する相対dBレベルを求める方法が現実的かもしれません。例えば、100dBSPLを基準値、つまり0dBとして定義するとします。すると80dBSPLのサウンドのボリュームスライダは-20dBに、130dBSPLのサウンドのボリュームスライダは+30dBとなります。また、HDRバスのスレッショルドも合わせて設定する必要があります。 |