SoundSeed GrainはWwiseのソースプラグインの1つで、グラニュラーシンセサイザーです。グラニュラーシンセシスは、オーディオファイルを小分けにした"グレイン(粒子)" に、振幅エンベロープを適用し("windowing"と呼ばれる処理)再生し、それをアウトプットでミックスダウンします。グレイン同士の発生の間隔や、グレインの長さ、ソースファイルを読む速さ(ピッチに等しい)、そしてソースファイル内のポジションなどを、すべて別々にコントロールするので、1つのソースファイルからでも多種多様なサウンドが得られます。また、グレイン同士の発生の間隔がグレインの長さよりも短ければ、グレイン同士がオーバーラップすることもあります。
デザイナーは、このグラニュラーシンセシス機能を利用して様々な可能性を探ることができ、最終的にはランタイムに、明確に定義されたパラメータ制限を守りながら、真新しく魅力的な音を無限につくり出せます。
SoundSeed Grainはグレイン毎にフィルタを設定でき、3Dスペーシャリゼーション機能も備えています。パラメータはすべて、モジュレーションやランダム化を適用でき、それにはRTPCや、Wwiseに組み込まれたグレインモジュレータ(Mod 1、Mod 2、Mod 3、Mod 4)を使います。
Waveformビューに、このプラグインが使うオーディオファイル波形のチャンネルをダウンミックスした様子が表示されます。新しいオーディオファイルをロードするには、Filenameフィールドの右にあるブラウズ […] ボタンを使います。
プラグインにとっての、このWaveファイルの有効な長さ(Duration)が、Waveformビューの右下に表示されます。ファイルのTrimポイント(Sourceタブで表示)を変更すると、ファイルの長さが変わります。SoundSeed Grainのメディア管理機能の詳細は 「Source Settings」 を参照してください。ファイルのDurationは、Playback Position( 「ファイルスキャンや時間拡張エフェクトのために、Saw upモードを使う」 参照)のモジュレータを設定するときに役立つ情報です。
PositionカーソルやOffsetカーソルをドラッグすれば(Offsetが表示されるのはSnap to Markersが有効な場合のみ)、該当するPositionやOffsetのプロパティ( 「コントロール機能」 参照)をより正確に、簡単に変更できます。
最後に、キャプチャ(ツールバーのStart/Stop Captureボタンで操作)中は、Grain VisualizerがWaveformビューに重なり、ファイルの各グレインの瞬時の位置が表示されます。長方形の透明度が、グレインのエンベロープのボリュームを表しています。Capture機能の詳細は 「サウンドエンジンからくるデータをキャプチャーする」 を参照してください。
SoundSeed Grainプラグインをコントロールするために、以下のとおり6つのグループボックスがあります。
Grains
Grainsグループボックスで、Time between Emissions(グレイン同士の発生の間隔)、Duration(グレインの長さ)、Shape(エンベロープの形状)を設定できます。この設定内容は、Envelope Visualizerに表示されます。
グレインのEmission設定は、グレインとグレインの間の発生間隔、またはグレイン発生のFrequency(頻度)で、指定します。また、MIDIノートから算定することも可能です( 「MIDIの使用」 参照 )。どちらを採用するかは、Select Freq/Tiimeドロップダウンメニューの該当するアイテムで選択します。グレインのEmissionやDurationは、非常に小さい値から非常に大きい値まで幅広く設定でき、サンプルアキュレートで、Wwiseサウンドエンジンのフレームサイズ(コントロールレート)に制限されません。
グレインの長さは、メニューで該当する選択肢を選択します。
Time between Emissions: 値を直接、設定します。
Emissions per second: Emissionの間隔の倍数です。
MIDI Duration。
Playbackグループボックスで、ソースオーディオファイルのどのPosition(位置)からグレインを読み始めるのかを定義します。Positionはソースオーディオファイル上の、グレインのスタート位置の設定で、ファイルの長さに対して単位%で表します。そこからファイルをそのまま読み続けますが、読む方向と速度は、SpeedとPitchで設定します。Speedの絶対値が1より大きければ正のピッチシフト、1未満は負のピッチシフトとして聞こえます。Speed値が負であれば、ソースオーディオファイルを逆方向に読みます。
グレインを読むPositionが100%を超えると(逆方向に読む場合は0%を超えると)、まわって0%まで(逆方向に読む場合は100%まで)戻ります。
グレインのスタート位置がマーカーの位置にスナップするようにするには、マーカーがあるときにSnap to Markersを有効にします。マーカーをインポートしたり、手作業で編集したり、ソースオーディオファイルのTransient(トランジェント)に自動的にアサインしたりできます。マーカーの詳細は Source タブ を参照してください。
Filter
独立したフィルタが、グレイン毎に1つずつアサインされます。これをコントロールするのがFilterグループボックスです。フィルタは、各グレインに別々に適用されるので、モジュレーションと合わせて使うのが最適です。もしアウトプット全体にフィルタをかけたい場合、例えばすべてのグレインに同じフィルタ設定を適用する場合は、EQをインサートエフェクトとして使った方がWwiseのパフォーマンス的に効率的です。
Positioning
このグループボックスで、アウトプットがマルチチャンネルのときのビヘイビアを定義します。アウトプットのチャンネルコンフィギュレーションは、下のOutputグループボックスで定義します。2つの選択肢があり、Direct Speaker Assignmentを選択すると、ソースファイルのチャンネルが1つずつシンセサイザーのアウトプットの該当するチャンネルにアサインされますが、3D Spatializationを選択すると、グレインが1つずつ、Azimuth、Elevation、Spread 「Source Editor: SoundSeed Grainプラグイン」 で定義されWwiseの 「Property Help」 ビューで確認できる設定によってスペーシャリゼーション処理されます。
Output
アウトプット側のConfig(チャンネルコンフィギュレーション)と、Level(シンセサイザーの全体のレベル)を選択します。
シンセサイザーを作成するとデフォルトで、OutputのLevelにデフォルトのEnvelopeがアサインされます。MIDIを使って作業するときは、Note Offでシンセサイザーが停止します。
VU Meter
シンセサイザーのアウトプットにおける信号を測定するメーターで、シンセサイザーのチャンネルコンフィギュレーションは、Outputグループボックスで設定したConfigと合致します。
グレインのEnvelopeの形状やオーバーラップが、Envelope Visualizerにプレビュー表示されます。オーバーラップの範囲は、Emissionレート、グレインのDuration、そしてReleaseの設定で決まります。なお、この数値はRTPCやモジュレーションを適用する前のものなので、実際の結果とはかなり異なることもあります。
ウィンドウの上下にあるハンドルをドラッグすれば、AttackタイムやReleaseタイムを変更できます。左右対称でないウィンドウ形状にするには、まずReleaseとAttackをアンリンクする必要があるので、GrainsグループボックスのReleaseパラメータ左にある、"link"ボタンを無効にします。
アタックはグレイン始点を起点に定義されるので、グレインのDuration内に構成されますが、リリースはグレインの終点以降に定義されるので、グレインのDuration内に構成されません。
SoundSeed Grainには4つのLFO / Randomizerがあり、プロパティの一部またはすべてに自由にアサインできます。いわゆるGrain Modulatorは、グラニュラーシンセサイザーの設定ウィンドウに組み込まれている以外に、グレインの最初から最後まで、持続する値を取り込みます。例えばFilter Cutoffにグレインモジュレータをアサインすると、各グレインのフィルタカットオフは、そのグレインの最後まで、同じ値で続きます。一方、非常に高い周波を尊重するので、Emissionレートが非常に大きく、例えば100マイクロ秒であったとすると、グレイン毎に、新しい正確な値が返されます。このような "LFOs" は、グレイン1つにつき1回ずつ、プロパティ値に影響を与えますが、Wwiseのコントロールレート(サウンドエンジンのバッファサイズ)に紐付いていないので、必要なだけ速くできます。
左ペインで、Grain Modulatorのプロパティを設定します。様々なバイポーラやユニポーラ ("+") の波形を選択したり、LFOの速さを時間や周波数で定義したりできます。
右ペインで、モジュレータをプロパティにアサインします。ここで、どのプロパティでも、1つまたは複数のモジュレータにアサインでき、Amountも自由に選べます。モジュレーションのAmountの意味は、プロパティによって異なります。一般的に周波数(Emission、Filter Cutoffなど)はオクターブ単位で設定しますが、Position、Pitch、SpeedなどのモジュレーションのAmountは、そのプロパティの単位(例えばPitchはCents)で定義します。分からないときは設定しようとしている行のAmountスライダをクリックし、 「Property Help」 ビューで確認してください。
Quantizationは、そのアサインメントのモジュレーションAmountのあとに適用されます。例えば、PitchのQuantizationにMajorを使い、モジュレーションAmountを500 centsとしたとします。許容されるPitch offsetは、unipolar modの場合は0、200、400、500(C MajorのC-D-E-F)となり、bipolar modの場合は-500、-300、-100、0、200、400、500(C MajorのG-A-B-C-D-E-F)となります。
あるプロパティにGrain Modulatorを適用すると、そのプロパティのスライダ横のModulationアイコンが点灯します。
キャプチャ中に、RTPCやモジュレーションを適用したあとの現在のスライダ値が、スライダに表示され、スライダの編集可能な範囲の下には明るい色のラインが表示されます。このラインが素早く動くと、表示中の範囲が現在値より遅れをとり、濃い色で示されます。この動きは、VUメーターと似ています。また、グレインモジュレーションがプラグインに組み込まれているので、スライダのメータリングの下に濃い色の範囲表示があります。これはグレインモジュレータにおける、このプロパティのAmountに基づいて厳密に再現された範囲で、モジュレーションレートが、グレインのEmissionレートよりも大きいときに役立ちます。詳細は、上記のGrainモジュレータと、モジュレータのアサインに関するセクションを参照してください。
Interactive Music や Control SurfaceのMIDI Eventを使い、SoundSeed Grainのインスタンスをトリガーすることができます。同様に、ゲームやSDKからMIDIノートが発行されることもあります。シンセ内で、MIDIノートが様々な目的で使われることがあります。MIDIノートの周波数をグレインのEmissionレートに使うことができます。その場合はSelect Freq/Timeのドロップメニューで "MIDI Emissions Per Second" を選択してください。また、MIDIノートの周波数を使って独自に、グレインのDurationをコントロールすることもできます。例えば、A1 (55 Hz) は18.182 msに等しくなります。これを有効にするには、グレインのDurationメニューで、MIDI Durationを設定してください。最後に、MIDIノートを使い、グレインのPitch offsetを制御することもできます。その場合はMIDI Pitchチェックボックスをチェックし、オフセット設定に使うRootノートを設定します。
注釈 | |
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MIDIをSoundSeed Grainで使う場合、あなたはおそらくシンセサイザーが上記のいずれかの方法でノートトラッキングを行うことを希望し、Wwiseがシンセサイザーのアウトプット信号をそのまますべて、ピッチシフトしてしまうのを希望していません。そこで、プラグインのホストである音のMIDIタブで、必ずNote Trackingを無効にしてください。 |