典型的なオーディオリミッター・コンプレッサーのスレッショルドと同様に、HDRスレッショルドによって、HDRウィンドウが移動する範囲の最小インプットレベル(図30.12「システムのインプット側からみた、HDRの概要」の黄色の線を参照)が決まり、この最低レベルより上では、コンプレッサーが作動し始めます。再生中のサウンドが小さいサウンドばかりの時は、アウトプットにおいて、これらのサウンドレベルは、HDRスレッショルドの影響を直接受け、つまり、ウィンドウの上端から遠ければ遠いほど、アウトプットレベルが小さくなります。このスレッショルドより上でサウンドが再生されると、小さいサウンドが自動的にダッキングされます。なお、圧縮率(圧縮率については後述)が無限の場合、 図30.13「HDRスレッショルドの効果」に示す通り、HDRスレッショルドより上のインプットレベルにある2つのサウンドは、それぞれのインプットレベルに関わらず、それが再生中の唯一のサウンドであれば、同じアウトプットレベルで再生されることを、充分に理解してください。
上図のグラフは、左がインプット、右がアウトプットを示しています。最初は-21dB、 スレッショルドが0dBに設定されているので、-21dBFSとしてアウトプットされます。2回目は、 スレッショルドが-12dBなので、サウンドは-9dBFSとしてアウトプットされます。3回目は、サウンドが スレッショルドの-24dBよりも上にあるため、ウィンドウが移動し、0dBFSとしてアウトプットされます。次にサウンドが0dBのインプットレベルで再生されると、 スレッショルドよりもさらに高くなりますが、それでも0dBFSとしてアウトプットされます。