HDRシステムは、Wwiseで設定したロジカルボリューム値を使うため、インプットサウンドの実際の振幅が把握できていない状態にあり、インプットサウンドのことを、持続する限りボリュームが一定である「ブラックボックス」とみなします。多くの場合、サウンドの振幅は変化します。例えば、アタックとリリースの部分から成るインパクトサウンドがあるとします。HDRウィンドウの位置を決めるような大きいサウンドであれば、このサウンドが終わるまでウィンドウの位置が常に一定に保たれてしまい、不自然です。ウィンドウへの影響を、図30.16「エンベロープなしの、ディケイするインパクトサウンドの、HDRウィンドウ」に示します。
Wwiseでエンベロープトラッキングを有効にすれば、HDRシステムが「ブラックボックス」の中をのぞくことができます。対象サウンドのプロパティの、HDRタブで、チェックボックスEnable Envelopeを選択すると、オーディオファイルの振幅エンベロープの解析結果がサウンドのメタデータに添付されます。HDRシステムがランタイムに、このデータを利用してウィンドウを適宜、移動させる様子を、図30.17「エンベロープ付きの、ディケイするインパクトサウンドが、小さく安定したバックグラウンドと重ねて再生される時の、HDRウィンドウ」に示します。
下図では、インプットを左側、アウトプットを右側、そして対応するアウトプット波形をその下に示します。
上の図のうち、最初の図では、インパクトサウンドのあとに水平となる部分がありますが、HDRシステムがサウンドを一定であると理解するためです。