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HDRとWwiseのボイスパイプライン

前述の通り、HDRシステムが使うのはオーサリングツールWwiseで設定したロジカルボリュームであり、オーディオデータの実際の振幅は無視されます。HDRシステムのロジックが検討するレベルは、HDRバスへのインプットレベルに相当し、HDRバスをInput busモードで確認すると、Voice Monitorに表示されます。これらのレベルは、ボイスボリューム、つまりActor-Mixer Hierarchy、Master-Mixer Hierarchyの各種コントロールバス、アクション、RTPC減衰、距離減衰などの効果を合算したものに依存し、さらに、シグナルフローにおいてHDRバスより上流に位置する各種ミキシングバスのゲインにも依存します。複数のシグナルパスがHDRバスに進む時、例えば複数のAUXセンドを使う時は、HDRロジックは最大ゲインのパスを使用します。

オーディオフレームごとに、サウンドエンジンはまず、全てのボイスのボリュームを、HDRバスが見る状態に計算します。次にサウンドエンジンが、HDRシステムのロジックを実行すると、ロジックがHDRウィンドウの位置に従ったグローバル(全体的)HDRゲイン・減衰を返すので、このゲインを各ボイスに適用します。これが終わると、サウンドエンジンは通常通りにボイスを処理、つまり、ボイスをボリュームスレッショルドと比較してバーチャルにするかどうかを判断し、データを出し、ボリュームを適用します。

メイクアップゲインと、ソースノーマライゼーション

HDRシステムのロジックは、ソースノーマライゼーションと、メイクアップゲインという、Wwiseが提供する2種類のボリュームプロパティを無視します。これらのボリュームコントロール機能は、主にオーディオアセットをロジカルボリュームから独立してノーマライズする際に使い、Wwiseにインポートする前に波形エディタで行える作業と同じです。例えば、ローカリゼーションメイクアップゲインを使って2つのランゲージのボリュームの違いをならすことができますが、HDRシステムの動作は、全てのランゲージで同じでなければなりません。このため、HDRロジックに無視されるボリュームコントロール機能の存在は重要であり、ソースノーマライゼーションやメイクアップゲインが、この役割を担います。

なお、バーチャルボイスシステムや、Voice Monitorビューは、メイクアップゲインやソースノーマライゼーションを考慮していません。しかし、バーチャルボイスはHDR減衰を考慮します。このため、HDRウィンドウより下にあるボイスがバーチャルになることがあります。

Property EditorのConversionタブにある、Make-Up Gain(メイクアップゲイン)スライダを、デザイン的な観点でHDRと共に利用することもできます。HDRシステムの視点からトランスペアレントなので、(シグナルフローの観点で)「HDR後のボリューム」と解釈することができ、HDRウィンドウとは独立してサウンドのボリュームを変更できます。HDRスレッショルドより上で、単独に再生されるサウンドは通常、同じレベルでシステムから出てきます。メイクアップゲインを使えば、結果としてボリュームが大きくなります。例えば、FPSゲームで、HDRシステムのダイナミックミキシング機能のメリットを活かしながらも、プレイヤーのガンのボリュームを他よりもかなり大きくしたいとします。その場合は、メイクアップゲインを使って増加させます。


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