距離減衰カーブは、通常通りに設定できます。ただし、HDRシステムで発生する予想外の動作があるので、注意してください。前述の通り、再生するサウンドが、HDRスレッショルドよりも上にあり、オーディオシーン内で最大であれば、システムから0dBFSで出されます。このサウンドが50m離れたところで再生されても、まだスレッショルドよりも上にあり、シーン内で最大サウンドであれば、やはりシステムから0dBFSで出されます。結果として、近い距離では減衰カーブが機能しないかのような印象を受けます。しかしそうではありません。実際には、距離が近くなる時のインプットボリュームの増加が、アウトプットボリュームを増加させず、他のサウンドをダッキングするために使われているのです。他に何も再生されていない状態では気付きませんが、大きいサウンドの減衰カーブをデザインする時に、この点を考慮する必要があります。
ここでは、リスナーが大きいサウンド(赤)から、徐々に離れていく様子を示しています。インプット側(左)のボリュームは正しいようですが、アウトプット側(右)では、大きいサウンドがHDRスレッショルドよりも上にある限り、距離が徐々に離れているにもかかわらずボリュームが変化しないので、距離減衰が機能していないかのような誤った印象を与えます。実際には、近距離にいる時の、スレッショルドを超えた分のボリュームオフセットが、大きいサウンドではなく、その他のサウンド(青)に影響を与えているのです。