ゲームの状況によって、リアルなサウンドスケープを生み出すには単一のサウンドインスタンスでは不充分となることも考えられ、その例が複数のスピーカーのPAシステムなどです。この時、サウンドとそれに対応するゲームオブジェクトを複製せずに対応するには、サウンドをエミット(出す)ゲームオブジェクトのクローンを作成して、ゲーム内の別の場所に配置することができます。PAシステムの例で言えば、オリジナルのサウンドをエミットするゲームオブジェクトのクローンを複数、作成して、下図のようにPAシステムの各スピーカーの場所に配置します。
クローンは、オリジナルのサウンドの正確な複製サウンドを出し、クローンのプロパティ、動作、減衰設定などはオリジナルのサウンドと同じです。なお、オリジナルのサウンドと複数のクローンが同時に再生されるので、それぞれのボリュームを全て足すのか、全サウンドの累積ボリュームをオリジナルのサウンドの最大ボリュームレベルで再生するのかを、選べます。
クローンを使うと、サウンドが単一のポジションで発生する場合とは違うスプレッドや減衰となる可能性が高いので、オリジナルのサウンドのスプレッド設定と減衰設定に気をつけてください。特に、オリジナルのサウンドとクローンの、複数のサウンドが同時にプレイヤーに聞こえる状況では、注意が必要です。クローンサウンドがオリジナルのサウンドに追加されると、合算されたサウンドのボリュームが大きすぎて、クリッピングが発生することがあります。
このようにゲームオブジェクトのクローンを使える他の事例を、以下に示します。
廊下の壁に、多数のトーチ(たいまつ)が並ぶ時。
池や滝などの大型の変形したオブジェクトがあり、単純な半径減衰が適さない時。
壁が部分的に崩れ落ち、壁の向こう側にあるサウンドが露出された時。クローンした複数のゲームオブジェクトを、それぞれ特定の場所に配置することで、部分的なオクルージョンやオブストラクションの表現となりうる。
ゲームオブジェクトのクローンを作成して改めて配置するのは、Wwise SDKで行います。1つのゲームオブジェクトに対して複数のポジションを設定する方法については、Wwise SDKドキュメンテーションの「Sound Engine Integration Walkthrough > Integrate Wwise Elements into Your Game > Integrating 3D Positions > Integration Details - 3D Positions」を参照してください。