バージョン
WwiseのHDRは、マスターミキサー階層のどの親オーディオバスに対しても、有効にできます。HDRを有効にしたオーディオバスは、HDRバスのインプット側にあるサウンドオブジェクトのボリュームと、同じバスのアウトプット側のフル(デバイス)スケールの間の、コンバーターとして機能します。このHDRバスにルーティングされた全てのサウンドが、相互関係を考慮してバス内で扱われ、音の小さいサウンドのアウトプットは、システムのプロパティ設定に合わせて、常に修正されます。
HDRバスのコントロール設定は、オーディオコンプレッサーのものと似ています。スレッショルド(閾値)、レシオ(比率)、リリースタイムのプロパティを使って、プロジェクトに設定されたダイナミックレンジウィンドウの動作を変更します。ランタイムに、オーサリングしたシステムがこの広い範囲に及ぶ様々なレベルを、使用するサウンドシステムのアウトプットに適したボリュームレンジにダイナミックにマッピングします。
可聴ダイナミックレンジは、最も大きい音や人間の聴力の限界によって決まり、実際には、ゲームプレイ向けのスピーカーで提供できるダイナミックレンジよりも何倍も広い範囲です。Wwise HDRシステムの役割は、現実世界のダイナミックレンジを、約40dB(テレビや音楽視聴向けレベルの70dBSPLから、室内ノイズレベルの30dBSPLを引いた数値)まで畳み込む、つまり圧縮することです。
この処理は、一種の動作圧縮です。大きいサウンドが再生された瞬間に小さいサウンドが聞こえなくなり、また小さいサウンドだけが再生されると、再び聞こえるようになるので、サウンドミックスに影響します。サウンド同士の相対的なレベルを維持して、再生するサウンド数を減らすことで、ミックスが鮮明になります。
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Designer Note |
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これまでの文献で、HDRオーディオシステムは、サウンドごとにSPL値を直接アサインすると説明されています。Wwiseでは、SPLという概念を排除し、代わりに相対的ミキシングにフォーカスをあてています。このため、WwiseにはSPLスライダがどこにもなく、相対的デシベル値だけが使われます。現実世界のSPL値をこのシステムで採用したい場合は、基準値とする値を決め、必要な引き算をして該当する相対的dBレベルを計算します。例えば、100dBSPLを基準値、つまり0dBとして定義します。そして、80dBSPLのサウンドのボリュームスライダは-20dBに、130dB SPLのサウンドのボリュームスライダは+30dBに設定します。 |