バージョン
霧のかかった山の上から、年老いたWwizardが、下の谷で繰り広げられるバトルをじっと見つめます。混乱の中、剣戟の冷たい金属音や、マジカルパワーのブラスト、投石の突撃音など、大きなサウンドが次々と上まで聞こえます。優先順位の高いサウンドが発生する度に、サウンドスケープにスペースがつくられ、繰り広げられる狂乱を強化する音が加わります。プレイヤーに気付かれないところで高度に調整されたメカニズムが作動して、耳に聞こえるラウドネスの優先順位が決まり、プレイヤーが感じ取る周囲の環境がサウンドで形成されます。それでは、大きいサウンドを優先するという考え方は、今日のゲームにどのように取り込まれているのでしょうか。
HDR(ハイダイナミックレンジ)は、Wwiseの様々なダイナミックミキシングツールを強化するために導入された、新しいミキシングパラダイムです。HDRを使うことで、大きいボリュームでオーサリングされたサウンドが優先され、ラウドネスのダイナミック性に対応するシステムを作成できます。音の相対関係を反映するミキシングシステムによって、オーサリング時の意図を維持して、重要なサウンドが聞こえるようにミックスの中に充分なスペースを確保できます。
先ほどのシーンに戻りましょう。バトルのサウンドが続く中、プレイヤーは無意識に最大サウンド(コンバット音)にフォーカスして、小さいサウンド(足音)を無視します。HDRシステムでは、大きいサウンドが、ユーザーの設定したウィンドウの上端(Window top)位置を決定し、このウィンドウが、最大サウンドが目立つようにダイナミックに移動します。ウィンドウが上に移動するにつれ、ウィンドウの下端(Window bottom)よりも下に位置するサウンドは、ミックスから外されます。谷間で繰り広げられるバトルで一方が勝利をおさめ、人々が霧に包まれた山の上を見上げると、大地を走る馬の蹄サウンドの振幅が強まり、最も音の大きい、脅威のサウンドとなります。HDRウィンドウのスレッショルド(Threshold)が元のポジションに戻ると、馬のサウンドの元々の振幅が表現されます。
本章では、以下の操作を説明します。
WwiseのHDRオーディオの活用
HDRオーディオミックスの設定
HDRオーディオのダイナミックレンジウィンドウの設定
マスターミキサー階層で、HDRオーディオを有効にする
HDRオーディオの、ダイナミックプロパティの設定
アクターミキサー階層におけるHDRオーディオの利用
エンベロープトラッキングを有効にする
波形エンベロープを編集する
ソースノーマライゼーションを有効にする
メイクアップゲインの利用
Audio Voice Monitorを使ってHDRを理解する
Voice Monitorビューを開く
Soundcasterでサウンドを試聴する
Wwiseからデータをキャプチャーする