Wwise 2024.1がリリースされ、Audiokinetic Launcherからインストールできるようになりました。本ブログでは最新機能の概要をご紹介いたします。
Wwise 2024.1では、本物さながらの印象的なオーディオ体験を生み出すのに欠かせないWwiseワークフローが改善されました。Wwiseとゲームエンジンとのリアルタイム接続が向上し、ライブメディア転送やライブ編集機能の拡張によって、スムーズなワークフローを提供します。また、デフォルトオブジェクトエディタとプロパティの可視性が向上し、サウンド、音楽、ダイアログの動作を決定する側面に明確にフォーカスしています。こうした機能強化は、インタラクティブオーディオの制作に携わるユーザによる、イテレーションを通じた最高品質のサウンド体験の実現をサポートします。
ユーザエクスペリエンス
Live Media Transfer
イテレーションを通じてサウンドを制作する場合、通常はサウンドファイルをデジタルオーディオワークステーション(DAW)でレンダリングし、レンダリングされたファイルをWwiseのオリジナル
フォルダにコピーすることで、以前のバージョンを置き換えます。Wwiseがゲームエンジンに接続されている状態でメディアを更新し、SoundBankを再生成することなくゲーム内で新しいファイルを再生できるようになりました。このタイプのLive Media Transferは、オーディオソース、AK Convolutionプラグインで使用されるインパルス応答ファイル、MIDIファイルに対して実行可能です。Audio File Importerや、WAVファイルをProject Explorerにドラッグ&ドロップするといった方法で新しいSound SFXやMusic Segmentを作成することもできます。
新たに作成したメディアファイルや変更されたメディアファイルによってディスクやゲームパッケージ内のファイルが置き換えられることはなく、これらのメディアはユーザがゲームを終了するまでメモリ内に保持されます。Wwiseプロジェクトで追加または変更されてゲームで使用中のメディアのみが転送されます。
この機能に使用するメモリ量の制御とメモリ使用量の追跡については、User Preferencesを参照してください。
さらに幅広いライブ編集機能
これまでもWwiseではゲームに接続して、ランタイムに一部のプロパティをプロファイリングして編集することで、即座にミキシングやサウンドの動作の変更を聞くことが可能でした。Wwise 2024.1では、利用できるライブ編集オプションの幅が広がります。これまで制限されていたプロパティ編集機能の一部が利用できるようになることに加え、"RTPC Curves"や"Effects"のライブ編集を含む新たなオプションも追加されます。
プロファイリングの際に行った変更がランタイムに自動適用されるようになるため、SoundBankの再生成が不要になります。対応可能となる変更は、以下の通りです。
- Actor-Mixer Hierarchy(Sound、Containerなど)、Interactive Music Hierarchy(Track、Playlistなど)、各種ShareSet、Event内のあらゆるオブジェクトの作成と削除
- コンテナまたはプレイリストの子の並べ替え、親の変更
- オブジェクトの出力バスの変更
- オブジェクトの名前の変更
- これまで利用できなかった(グレー表示されていた)細かいプロパティの一部が利用可能に
こうした変更により、SoundBankを生成またはリロードすることなく、ゲームをプロファイリングしながら1つのオーディオ機能全体を作成できるようになりました。
ほとんどの変更はゲーム内でシームレスに行われますが、再生中のオーディオ構造に影響を与えるライブ編集の場合は、グリッチが聞こえる可能性があります。
Live Media Transferとより幅広いライブ編集機能が利用できるようになったことで、DAW、Wwise、そしてゲームエンジン間に、これまで以上に目的にフォーカスした、反復的なリアルタイムワークフローが生まれます。Live Media TransferとさまざまなLive Editingの詳細については、ゲームのプロファイリング中に編集するを参照してください。
Unrealのライブ編集機能の向上
今回のリリースによるライブ編集機能の向上は、Unrealインテグレーションのユーザに大きなメリットをもたらします。今後は、クッキングプロセスを経なくても、サウンドデザイン全体を対象にイテレーションを行えるようになります。Unreal Editorでの作業中にWwise Browserから新たなEventを追加でき、SoundBankの生成はトリガーされません。
編集ワークフローの機能強化
Wwise 2022.1より、Object Tabが利用できるようになりました。Objectタブによって、Project Explorerのコンテキストに基づくナビゲーションが可能となり、ほかの多くのアプリケーションと同じように、プロパティやデフォルトエディタがタブベースのエクスペリエンスの中に組み込まれました。この変更によってデフォルトエディタにアクセスしやすくなったものの、これらのエディタの位置はほとんど変わりませんでした。一方で、新しいセカンダリエディタへのアクセスしやすさは向上しました。Wwise 2024.1では、編集プロセスがさらに向上します。
プライマリエディタ:デフォルトオブジェクトエディタ
Wwise 2024.1では、オブジェクトのデフォルトエディタの位置が、オブジェクトの動作を目立つ場所に一元的に表示するプライマリエディタ内に統一されました。
この変更に伴い、一部のプロパティはユーザインターフェース内での配置が変更されました。特に次のオブジェクトエディタは、大きく変更されています。
Random Container Editor
Sequence Container Editor (Playlist)
Switch Container
プライマリおよびセカンダリエディタ:最大化とポップアウト
プライマリエディタとセカンダリエディタをそれぞれ最大化またはポップアウトするアイコンを追加しました。
セカンダリエディタ:Contents Editor
Contents Editor内のプロパティの表示を更新し、重複を減らしました。
Property Editorの機能強化
プロパティエディタのデザインを刷新し、縦長のレイアウトにしました。使い慣れた使用感はそのままに、より充実したエクスペリエンスを提供します。
Property Editor:プロパティカテゴリの表示/非表示
今回の変更に伴い、Property Editor内のプロパティカテゴリの表示/非表示をカスタマイズできるようになり、さまざまな編集ワークフローに対応できます。このため、使い慣れたProperty Categoriesのレイアウトをそのまま使用することも、必要に応じて新しい構成にすることも可能です。
Property Editor:追加される機能
- Expand/Collapse Property Editor:Property Editorを折りたたんでPrimary EditorとSecondary Editor用のスペースを確保します。特にプライマリエディタとセカンダリエディタにグラフやカーブが表示されている場合に便利です。
- Search Text Filter:プロパティ名を入力して、下のリストをフィルタリングできます。例えば、「pitch」と入力すると、「pitch」という言葉を含まないプロパティはすべてリストに表示されなくなります。
- Only Show Modified:選択すると、デフォルト値から変更されたプロパティのみが表示されます。該当するプロパティはオレンジ色にハイライトして表示されます。
- Category Filters:カテゴリフィルタを選択すると、そのカテゴリ内のプロパティがすべて表示されます。Ctrlキーを押しながらクリックすると、複数のカテゴリフィルタを選択できます。またはAllをクリックして、すべてのプロパティを選択することもできます。
- Show/Hide Category Filters:リスト内のカテゴリ選択を解除すると、そのカテゴリフィルタが削除されます。Configure Favoritesを選択するとダイアログが開き、ここですべての対象プロパティから選択することができます。またはProperty Editorで任意のプロパティを右クリックして、Add to Favoritesを選択します。お気に入りを設定すると、そのお気に入りのカテゴリフィルタが表示されます(6)。
- Favorites:選択すると、お気に入りがすべて表示されます。
- Category Expand/Collapse:矢印をクリックすると、プロパティリスト内のカテゴリやグループを展開または折りたたむことができます。
- More Options:これらのオプションを使うと、すべてのカテゴリやグループをすばやく展開または折りたたんだり、デフォルトステートに戻ったりできます。
詳細については、Getting to know the Property Editor を参照してください。
Attenuation Editorの改善
- Distance Scaling Percentage
- Attenuation Curveカテゴリ
この新しいDistance Scaling プロパティによってWwiseサウンドの伝播機能が拡張されます。このプロパティはAttenuation Editor内にあり、アテニュエーション(減衰)を参照するオブジェクトのリストを表示します。アテニュエーション(減衰)のMax距離のパーセンテージを指定することで、各サウンドの距離を調整できます。オブジェクトで目のボタンが選択されている場合、Distance Scaling %で行った変更は、Effective Max Distanceフィールドならびにアテニュエーション(減衰) グラフに反映されます。さらにアテニュエーション(減衰)カーブが縮小可能なカテゴリに編成されます。
LightテーマとDarkテーマの更新
LightテーマとDarkテーマの更新により、見やすさが向上し、目への負担が軽減されます。
インテグレーション
Wwise 2022.1より、Au
UnityのAuto-Defined SoundBanksとAddressables
Wwise UnityインテグレーションがAuto-Defined Soundbanks対応となり、オプションとして、Unityのダイナミックアセット管理システムであるAddressablesと連携できるようになりました。
Unrealのパッケージング
WwiseアセットをUnrealのパッケージング基準に従い、個別のファイルとしてではなくUnrealアセットにパッケージできるようになります。この新しいオプションによりパッケージするファイル数が減少し、パフォーマンスの向上をはじめとするメリットが得られます。詳細については、 Packaging Wwise Assets as Bulk Data を参照してください。
このパッケージング機能には、次のようなさまざまなメリットがあります。
- アセットのロード/アンロードの速度が向上する
- 言語による分割やユーザ固有の分割によるチャンクに対応できる
- DLCをはじめとするアセットの前提条件に役立つ
- プロジェクトを開く際やパッケージング/クッキングの際の遅延を増加させない
- モジュール式のゲームビルドやマルチプロセスクッキングが可能
WwiseSoundEngineプラグインのモジュール化
WwiseSoundEngineモジュールとWwise Sound Engineライブラリをモジュール化し、ライブラリがそれぞれのWwiseSoundEngineプラグイン内に含まれるようにしました。これにより、WwiseSoundEngineのモジュールとサブモジュールを除くすべてが削除できるようになるため、WwiseSoundEngineの実装をカスタマイズしやすくなります。
"Null" SoundEngine
プラットフォームに新たに"Null" SoundEngineが追加され、完全にサポートされていないSoundEngineや、サーバインスタンスなど、SoundEngineがバンドルされていないケースに対応します。
Spatial Audio:3D Audio
今回のSpatial Audioの改善による精度の向上に伴い、既存のWwise機能もさらに際立ちます。3D Audioは、ヘッドフォンを使用する場合のバイノーラルミックスをレンダリングするための中間フォーマット、またはHeightチャンネルを持つイマーシブチャンネルベースのミックスとしてオーディオを提供します。またWwise Acousticsは、音の伝播を音線(音響エネルギーの伝わり方を表す直線)としてモデル化することで、ランタイムにインエンジンのジオメトリと連動して、空間のリアルな音響シミュレーションを作成できます。
これらの機能は、単独または組み合わせて使用することで、リスナーが耳にするサウンドがまるで自分の身の回りから聞こえているような印象与えることを目的としたものです。
Wwiseは、Apple、Android、PlayStation、Xbox、Windowsのすべてのプラットフォームで3D Audio対応となります。これにより、本物さながらの独創的なオーディオ体験を生み出す機会がさらに広がります。
Androidでは、Open Sound Library for Embedded Systems(OpenSL ES)のサポートが拡張され、3D Audioを有効にした状態で空間化されたメインミックスの設定が可能になります。
互換性のあるAndroidデバイスでDolby Atmosをサポートするため、5.1.4または7.1.4のメインミックスチャンネル設定がWwiseにより5.1.2にダウンミックスされ、さらなる空間化が実現します。
ADMのサポート(実験的)
試験的にAudio Definition Model(ADM)WAVファイルのインポートと再生に対応します。こうしたソースは、チャンネルベッドと3D配置されたダイナミックオブジェクトを持つオブジェクトベースの完結したオーディオシーンを含むことができるため、これまでの映像効果やイマーシブ音楽に代えて利用できます。こうしたファイルは、オーディオファイルのインポートでは、通常のWAVファイルと同様に扱われます。ADMファイルは、Actor-Mixer HierarchyのSourceとして、またはInteractive Music HierarchyのClipとして使用できます。
ADMの仕様は柔軟性が高く、Wwiseの今回のバージョンではその一部の機能(すべてではありません)がサポートされます。特に、次のツールを使って生成されるADMを中心に対応します。
- Dolby Atmos Master ADMをエクスポートする際のAvid Pro ToolsとSteinberg Nuendo
- EAR Production SuiteのREAPER
- 360 WalkMix Creator
現在、次の機能に対応しています。
- Direct Speaker Panningとしてのチャンネルベッド
- アニメーション付きの3D配置されたダイナミックオブジェクトとしてのMonoオブジェクト
一部のハードウェアコーデックの実装では、通常ADMで使用される高いチャンネルカウント数に対応できません。次のコーデックを使用する場合は、ADMメタデータが維持されます。
- PCM
- ADPCM
- Vorbis
- Opus
この実験的機能の既知の問題一覧は、 既知の問題点と限界 を確認してください。
Spatial Audio:Acoustics
Reflectionの改善とParameter Smoothing(試験的)
マテリアルフィルタリングを最適化し、マテリアルフィルタリングのモードを次のいずれかに変更する設定をReflectに追加しました。
- パフォーマンスを優先: シェルフ フィルターを使用して素材の音響特性を近似します。従来の方法に比べて CPU 使用量が 4 分の 1 に削減されます。Favor Performanceを使用する場合、2つのミッドバンド吸収値は独立ではなく、この2つの値によってミッドゲインが決まります。
- 品質を優先: 詳細かつ正確な 4 バンド フィルターを使用して、素材の音響特性をリアルにモデル化する従来の方法。
Wwise Acoustics のパフォーマンスと品質を微調整できる機能がいくつか追加されました。
- サウンドエミッターあたりの回折経路の最大数を制限します。 AkSpatialAudioInitSettings::uMaxDiffractionPaths および AK::SpatialAudio::SetMaxDiffractionPaths を参照してください。
- 最大回折係数をカスタマイズし、パスが 180 度の回折角度を超えることを可能にします。 AkSpatialAudioInitSettings::fMaxDiffractionAngleDegrees を参照してください。
- 音が複数の物体を通過するときに透過損失係数を累積する方法をカスタマイズします。 AkSpatialAudioInitSettings::eTransmissionOperation を参照してください。
グローバル リフレクション リミットは、複雑な環境での CPU 使用率を制御するために使用できる実験的な機能です。レイキャスティングによって発見された潜在的な反射パスは、まずヒューリスティックに従ってソートされ、どのパスが最も目立っているかが判断されます。その後、AkSpatialAudioInitSettings::uMaxGlobalReflectionPaths によって決定される最も目立っているパスに対してのみ、完全な反射パスの計算が実行されます。反射パス計算の合計数を制限すると、CPU 使用率を大幅に削減できます。
AkSpatialAudioInitSettings::uMaxGlobalReflectionPaths および AK::SpatialAudio::SetMaxGlobalReflectionPaths を参照してください。
Parameter Smoothingは実験的機能で、有効にすると、音響レンダリングパラメータの経時的な変化率を制限できます。こうしたパラメータには、回折、透過損失、オブストラクション(妨害)、オクルージョン、バーチャルポジション、パスゲインなどが含まれます。この機能は、従来的なレイキャスティングと回折設定を使用する場合に、異なる音響コンテキスト間で起こる「急に音が出てすぐに止まる」問題に対応するもので、CPUの使用量を抑えつつオーディオ品質を維持できます。 AkSpatialAudioInitSettings::fSmoothingConstantMs および AK::SpatialAudio::SetSmoothingConstant を参照してください。
(実験的) とマークされている空間オーディオ機能は、デフォルトで無効になっており、テスト済みであり、当社の知る限りではバグがないことが期待されています。実験的に導入している新機能をぜひご利用いただき、ご意見やご感想をお聞かせください。
SDK
Converted File Cacheのリファクタリング
作業をしやすくし、マルチプラットフォーム開発に向けて最適化するため、Converted File Cacheのリファクタリングを行いました。
- 異なるプラットフォームで同じ設定を使用する場合に一度だけファイルが変換されるように、すべてのプラットフォームをマージしました。
- 変換済みファイルのエイリアスをファイル名に使用することで、ファイルの重複を避け、キャッシュファイルの有効性を評価しやすくしました。
新しいメモリアロケータ
メモリの使用量、制御、モニタリングを総合的に改善するため、Wwiseのデフォルトメモリアロケータの書き換えを行い、rpmallocをAkMemoryArena
と呼ばれるものに置き換えました。AkMemoryArena
の具体的な特徴は、次の通りです。
- rpmallocに比べ、メモリ使用量が約10減少
- TLSF(Two-Level Segregated Fit)アルゴリズムに基づくほとんどの汎用メモリアロケータに匹敵するフラグメンテーション性能
- メモリリソースのダイナミックな拡張性は維持されるため、時間の経過と共に必要に応じて新たなメモリ範囲を取得し、解放することができ、事前にすべてのメモリを予約する必要がない
- ゲームプロジェクトにおける幅広いメモリ割り当て戦略をサポートするさまざまな設定オプションがある
AkMemoryArena
がWwiseに統合されたことで、使用中のメモリのレイアウトのプロファイリングも可能となり、サウンドエンジンのメモリフラグメンテーションの経時的変化を詳しくモニタリングできます。この機能により、デベロッパはさらに的確にWwiseによるメモリの予約方法を理解し、制御し、最適化できるようになります。
WAAPI
Wwise Authoring API(WAAPI)にBlend Containerに関連するアクセサを追加しました。
- Blend Trackを追加できるようになります。
- Blend Container Child Objectのアサインの追加や削除ができるようになります。
- Blend Container Child Objectアサインを取得できるようになりました。
プラットフォームサポート
Wwiseは新たに次のプラットフォームに対応します。
- Apple VisionOS
- OpenHarmony (OHOS)
さらに、実験的に対応しているWebGLプラットフォームでも、以下の点が改善されます。
- Unityを使用しないゲームインテグレータ向けに、新たにマルチスレッドに対応
- 新たにUnity 2023.xに対応一方、Unity 2022.xは非対応となります。
プラグイン
Windows向けのMotionプラグインが更新されて、GameInput APIに対応するようになりました。特に注目すべきは、これによりデザイナーがWwise AuthoringツールのXbox OneやXbox Seriesゲームパッド上でImpulse TriggerのMotionプラグインの動きをテストできるようになることです。またWindowsでサポートされるゲーム上でImpulse Triggerを使用することも可能になります。この変更により、DirectInputのサポートもMotionシンクプラグインや関連するAPIから削除されました。MotionでGameInputを使用する方法については、 Wwise Motionの統合 をご参照ください。
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