その誕生
このプロジェクトは2012年に始まり、私たちはこの6年間、Wwiseを実践的に学びたいというユーザーからのリクエストに応えようと取り組んできました。当時、ちょうど複数のプロジェクトを終えたばかりのDamian Kastbauerの協力を得て開発されたWwise Project Adventureは、オーディオ実装事例が盛り沢山のWwiseプロジェクトです。300ページにもおよぶハンドブックには、Wwiseの初歩的な機能から上級者向けの使い方まで細かく書かれています。この仮想プロジェクトでは、サウンドデザイナーであれば誰もが一度はプレイしたことがあるであろうゲーム「ゼルダの伝説」シリーズに似た、アクションアドベンチャーゲームを開発するというストーリーのもと、用意されたアセットでサウンドを構築していきます。
多くのサウンドデザイナーや専門学校にとって貴重な教材となったWwise Project Adventureは、Wwiseを使ったインタラクティブオーディオの職人技を効率的に習得できる教材となりました。私は長年の間、このWwise Project Adventureハンドブックで語られた架空のゲームを、実際に開発する可能性はないものか、と期待していました。そこへ、MadsとJacobの登場です。
Wwise Adventure Game
コペンハーゲンのオールボー大学(Aalborg University)の、Mads Maretty SønderupとJacob Lynggaard Olsenの2人の大学院生から連絡があり、「私たちは修士号を取得するために、業界で4か月のフルタイムのインターンシップを経験する必要があります。コンポーザーでありサウンドデザイナーである私たちは、Wwiseが大好きで、Unityでコードを書くこともできます。」という出だしの内容でした。
私はハッと気が付きました。「もしやWwise Adventure Gameを開発する技量を備えた人間にめぐり合えたのでは?」と。不安と迷いを抱きながらも、彼らのポートフォリオを確認してみると、Unityを使って何人かで共同開発したゲームを例に、プレイヤーの行動に対する音楽の影響について、完成度の高い動画がいくつかあり、プロシージャルコードの紹介や、その他の使い方も説明していました。スカイプで面接してみると、このプロジェクトにぴったりのペアだと、すぐに感じました。
アクションアドベンチャーゲームの「ポケット版」開発
名作アクションアドベンチャーゲームによくあるような要素を含むゲームを構築したいと思いました。役立つコンテンツをできるだけ多く詰め込みながら、少人数で短期間に仕上げられるようなコンパクトなゲームにする必要がありました。さらに、Wwiseを学ぶのに最高のプラットフォームとしなければなりません。
レベルデザインから始め、まずは屋内外のロケーションの構築を手掛け、村や森、洞窟や図書室、そして砂漠などをつくりました。
プレイヤーがコントロールするキャラクターは若き冒険家で、Allegro Kingdomを訪れてBlacksmith(鍛冶屋)に出会い、そこで村民を襲った疫病に打ち勝つための武器をもらったあと、物知りのWwizardからバックストーリーを聞き、いくつかのクエストを言い渡されます。ゲーム中に複数の敵と戦ったり、キーなどのアイテムを集めたり、部屋を解錠したりして、最終的にAllegro Kingdomを闇に陥れる諸悪の根源であるCoreを、破滅させる必要があります。
一石二鳥
読者のご想像のとおり、Audiokineticにとってゲーム開発は稀な試みです。ゲームをビルドできる機会が訪れたことで、私たちは様々な目標を掲げました。UnityユーザーがWwiseインテグレーションの仕組みを学べるサンプルゲームにすること。2つの新しい技能検定コースの基礎とすること。ゲームはデスクトップで稼働するだけでなく、iOSやAndroidデバイスでもプレイできるようにして、デベロッパがこれらのデバイスでWwiseのパフォーマンス評価ができるようにすること。また、Wwiseのスペーシャルオーディオ機能のUnityインテグレーションのデモとして使えること。
ゲームを設計する上でわざとGame Syncsを数多く入れてました。例えば一日の時間の経過を表現するTime of Dayや、破壊レベルや、プレイヤー健康状態などを操作できるようにして、Wwiseを学ぶ学生が自分のアイディアや表現力を活かして自由にサウンドデザインを変更できるようにしました。きっと多くの学校で、WAGをWwiseでインタラクティブオーディオを学ぶための最善のゲームと捉えてくれるだろうと、思います。
Wwise-251 技能検定: パフォーマンスの最適化とモバイルへの適用
準備に何か月もかけたこの技能検定もようやく完成し、いよいよ今月中にリリースされます!最適化のテクニックを習得するには、Wwise-101やWwise-201の技能検定の内容を超えた知識が必要です。最適化とは、オーディオ構成やイベントを構築する作業と比べ、もっと抽象的なコンセプトだと考えることができます。このため、技能検定では、コンバージョン設定、エフェクトの最適化、プラットフォームのカスタマイゼーション、サウンドバンクの細分化、ボイス管理など、数多くのトピックがあげられています。オーディオに使えるメモリやCPUがタイトな中、いかに高品質のコンテンツを詰め込めるかを検討し続けるゲームデベロッパたちに、役立つコースであることを願っています。
Wwise-301 技能検定: WwiseのUnityインテグレーション
こちらは、制作し始めたばかりの次の技能検定で、2018年夏のリリース予定です。目的は、WwiseのUnityインテグレーションの活用です。300番台の技能検定なので、Wwiseを使いこなしている学生を想定してあり、301の内容の大部分はUnity上の操作です。ユーザーはUnityコンポーネントを使ったり変更したり、カスタムスクリプトを作成したり、Wwiseタイプを使ったり、データ管理を最適化したりする演習を行います。
Wwise-301では、Wwiseを使ったオーサリングと、ゲームエンジンレベルのサウンドインテグレーションの間のギャップを補い、今までに多くのデザイナーから出た要望に応えたいと考えています。Wwise-301技能検定を修了したサウンドデザイナーは、新たなUnityゲームで開発を進めるだけの基礎を習得して、オーディオインテグレーションの大部分を自分でできるはずです。
今後の展開
今回のレベル構成は、スペーシャルオーディオにおけるWwiseの開発を念頭に設計されています。そのため、WAGの今後のリリースにはルームやポータルを追加して、音の伝播をデモする予定です。おそらくWwise Reflectも追加して、ジオメトリ情報を取り入れたダイナミックなアーリーリフレクションをUnityで稼働させて披露するかと思います。Wwise Audio LabはUnrealインテグレーションでビルドされているので、スペーシャルオーディオ機能をテストするのに既に充分ですが、これをWAGの機能として提供することで、サードパーソン視点のゲームに適用する方法をテストして、Unityでどのように表示されるかも見ることができます。
協力してくれた関係者たち
このプロジェクトに献身的に努力してくれたMads Maretty SønderupとJacob Lynggaard Olsenの両氏に、ここで改めてお礼を言いたいと思います。何度も私達の期待以上のものを実現させてくれて、これから何年もの間、何千人ものユーザーが使えるような形に整えてくれました。ゲーム開発の常として途中でいくつかの障害がありましたが、いつも懸命に研究しては、ソリューションや巧みな回避策をみつけてくれました。また、作曲して実装してくれた音楽が、実に素晴らしくゲームにぴったり合っていることも、忘れてはなりません。
さらに、Julian KwasneskiのBay Area Soundチームが、ゲームのサウンドエフェクトやアンビエンスのデザインに協力してくれました。おおもとのWwise Project Adventureハンドブックをリリースしたときに、オーディオコンテンツを作成してくれて、そのままゲーム用にも、コンテンツを拡張して提供することに同意してくれました。ありがとう、助かりました!また、Bay Area Soundや開発チームとの間に入ってプロジェクトを進めてくれたDamian Kastbauerも、ありがとう。2012年のWwise Project Adventureハンドブックを最初に成功させてくれたことにも大変感謝しています!DamianのこのハンドブックこそWAGが生まれたインスピレーションであり、この6年間、世界中の学校で重宝されてきました。
もちろん、Audiokineticでこのプロジェクトに協力してくれたみんなにも、大いに助けてもらいました。特にQAチームやゲームインテグレーション担当チームがコードや技能検定のコンテンツを仕上げるのに自ら工夫を凝らしてくれたほか、Myriam Pelletierがペンディングタスクの管理やアドミ関連の仕事をさばいてくれ、おかげでスケジュール通りにリリースできました。みんな、ありがとう!
WAGのダウンロードは、Wwise Launcherから!
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