最新版Wwise 2019.1がついにWwise Launcherからダウンロードできます。
このバージョンには、GDC19来場者皆さまから大好評の Voice Inspector機能のほか、ご要望の多かったスペーシャルオーディオ関連の改善点や、インタラクティブミュージックの作業効率と柔軟性を高める新機能、そしてユーザーエクスペリエンスやワークフロー、パフォーマンスなどの改善が含まれます。まさに今古いバージョンのWwiseで作業中のプロジェクトがあり、どうしてもそのブランチやパッチから離れられない場合を除き、Wwise 2019.1へのアップグレードを強く推奨します。私たちの狙いは、誰もがインタラクティブオーディオをアクセスできるようにすることで、同時に、上級ユーザーには、これまで以上に複雑なインタラクティブ性を実装する手段をお届けしたいと考えています。つまり、Wwiseをどのように使っていても、インタラクティブオーディオの経験レベルに関わらず、Wwise 2019.1はきっと、あなたの目的に合うはずです。
Wwise 2019.1 新機能
Voice Inspector
Wwiseの柔軟性がここまで高まると、プロジェクトがさほど大きくなくても、いずれ なんでこのサウンドのボリュームがこんなに小さいの? という疑問が出てきます。それに答えてくれるのがVoice Inspectorで、あるボイスの寿命がつきるまでの、そのボイスのボリューム、LPF、HPFの変化をすべて、確認できます。Voice InspectorのVoice Graphパネルに、1つのボイスだけが表示され、そのボイスの各接続、各パス(ドライ、ウェット)、各レイ(ray)(複数のリスナーと、ゲームオブジェクト同士の関係性をつなげる役)の詳細が示されるので、ボイスプロパティをくまなく調査したいときに、不明点を排除してくれます。
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具体的には、Voice InspectorにVolume、LPF、HPFなどの変化が表示される対象は、以下の通りです:
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ボイス階層にある全オブジェクト、つまりオーディオデバイスごとの、ソースから、Master Audio Busに至るまでの、全オブジェクト。
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RTPC、States、HDR、Aux Sends、Event Actions、Mute、Solo。
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Distance attenuation、Cone attenuation、Obstruction、Occlusion。
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オートダッキング、メイクアップゲイン、Randomizer設定、一部のAPIコール。
さらに、Wwiseに新しいレイアウトとして、Voice Profiler (F11) が追加されました。Voice Profilerというレイアウトは、Voice Inspectorが中心ですが、それ以外にVoice Monitorも表示され、全ボイスボリュームの概要を確認できるほか、キャプチャーしたセッションのタイムラインを簡単にスクロールできます。
インタラクティブミュージック
Interactive Music Hierarchyで、デザイナーの作業効率や柔軟性の改善点が、2つ施されました。
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WwiseのEventを、Music Segmentでトリガーできるようになりました。新たなシナリオの可能性が生まれ、音楽とゲームプレイの結び付きをさらに強めたり、ゲームの楽曲のソニックバリエーションを増やしたりできます。
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Music Playlist Containerで設定する、音楽のトランジションの際のDestination(行き先)のJump先として、新たにLast Played SegmentとNext Segmentの2つが追加されました。プレイリストに戻る際に、最初から再生しなおすのではなく、最後に再生したところから続けることが可能になりました。例えば、MusicのSegment A、B、Cを、1つのMusic Playlist Containerで再生したあとに、別のMusic Playlist Containerにトランジションした場合、元に戻るときは、最初のMusic Playlist ContainerのCまたはDの冒頭から再生することができるようになり、Aから再生する必要はなくなりました。
スペーシャルオーディオ
Spatial Audioの動作やパフォーマンスは最適化され、さらに進化しています。
ポータルを通して伝搬するリフレクション(反射)
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エミッターがリスナーと同じルームにいなくても、その音がポータルを通して聞こえる場合は、Wwise Reflectのアーリーリフレクションは、反射パスに、ポータルの回折(diffraction)を適用して、計算されます。
ルームやポータルを通るサウンドパス(sound path)を、ジオメトリに基づく回折パスによって調和
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エミッターがリスナーと同じルームにいないケースでは、ジオメトリーによる回折(エッジ回折)から生成されるパスと、ポータルにおける回折から生成されるパスを組み合わせて、サウンドパスを計算します。
ポータルは、ジオメトリと交差する箇所に開口部を切り出す
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リフレクションはポータルを通過することができ、ポータルの開口部で最大2つの平面が交差していても通過できます。ポータル自体が音響的な開口部なので、音を通過させるためにジオメトリに「穴をあける」必要はなく、音の伝搬のための三角形の総数を、大幅に減らせます。
Spatial Audioの最適化
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更新頻度の削減: 動作のスレッショルド(閾値)を、スペーシャルオーディオの新しい初期化パラメータでコントロールできます。エミッターとリスナーが、スレッショルド値で定義された半径外に移動しない限り、スペーシャルオーディオで再計算を行いません。その結果、精度を犠牲にするものの、CPU負荷を削減できます。実際には、パスの計算をフレーム毎に更新する必要はなく、精度とCPU負荷の妥当なバランスを見出すことができます。
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マルチスレッド対応: プラットフォームのinit設定経由でWwiseのサウンドエンジンのマルチスレッド処理を可能にすることで、Spatial Audioで、マルチスレッドを活用しながら複数のサウンドエミッターのパス計算を実行できるようになりました。
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ジオメトリの範囲を1つのルームに限定: 最適化の一貫として、個別のルームに音の伝搬のジオメトリセットをアサインすることで、反射面やレイの交差計算の検索範囲を、限定できるようになりました。
Wwiseオーサリングツール
Wwiseオーサリングツールは最新の機能や変更のおかげで、今までになく洗練されました。
ユーザーエクスペリエンスとワークフローの改善
RTPC
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RTPCタブを開くと、カーブの一覧の右側のパネルで、ゲームパラメータ、MIDI、LFO、Envelope、Timeなどのプロパティ値を直接変更できるようになりました。
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新しくFind All Referencesボタンが追加され、ある変更要因を共有するオブジェクトがいくつあるのかを表示し、クリックするとReference Viewが開きます。
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スライダ、フェーダー、ドロップダウンメニュー、チェックボックスなどで、コンテキストメニュー(右クリック)から、RTPCを直接追加できるようになりました。
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水平方向の分割線が追加されたので、多数のカーブを使うオブジェクトを表示するときなどに、大変便利になりました。
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新しくEnable AttenuationというRTPC対応のプロパティが追加され、Attenuation ShareSetを適用するかどうかをコントロールできるようになりました。
Source Editor
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波形の編集能力を最大限にするために、Source Editorビューを整理しました。ソースの全プロパティを波形の右側のペインにまとめ、ペインの大きさを変えたり最小化したりできるようになりました。
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マーカーがSource Editorに表示されるようになり、その位置や名前を変更できるようになりました。
Project Explorer
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オブジェクトをコピーし、そのオブジェクトの上からペーストすると、親オブジェクトを選択せずにオブジェクトのコピーを作成できます。
レイアウト
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最後に使用したレイアウトが保存され、次にプロジェクトをロードすると自動的に復元されます。
Work Units
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様々なプロジェクトからWork Unit(WWU ファイル)をインポートするときに、リンクされていなプロパティもサポートするようになりました。
Logsビュー
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新Logsビューに、起動、プロジェクトロード、SoundBank生成、オーディオファイルのコンバージョン、WAAPIなどに関するメッセージが表示されます。Project Load LogビューやSoundBank Generation Logビューの代わりとして導入された、新しいビューです。
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ログのサマリー情報が、Wwise画面の右上に追加され、ダブルクリックすると、Logsビューが開きます。
Wwiseのスキン
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実験的に導入された新スキンLightは、従来のスキンよりもUIのコントラストが高くなっています。
キーボードショートカット
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Mute、Soloのキーボードショートカットは、それぞれデフォルトでAlt+M、Alt+Sになりました。
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TabキーをProject Explorerで押すと、階層内を移動できます。
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ボタンのヒント(tooltip)に、割り当てられたキーボードショートカットが表示されます。
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前のフレーム、次のフレームにProfilerレイアウトで移動する機能として、それぞれAlt+, 、Alt+. が、割り当てられました。
SoundSeed Grain
Grainというソースプラグインでは、複数のバグフィックスやUXの微調整のほか、以下が追加されました:
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Vorbisに対応しました。
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全Envelopeタイプに関して、パフォーマンスを最適化しました。
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モジュレータアイコンを右クリックすると、簡単にモジュレーションを追加できます。
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モジュレータアイコンをダブルクリックすると、モジュレーションリストで、そのモジュレータが選択されます。
SoundSeed Grainの詳細は、こちらの 製品概要 をご覧ください。
パフォーマンスの最適化
Wwiseの複数の領域で、最適化が行われました。
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Wwiseを使ったプロファイリング中の、ゲーム中のオーバーヘッドが、大幅に改善されました。特に過去に、プロファイリング中の動きが遅くなった経験のあるユーザーは、劇的な改善を期待できます。
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Performance Monitorに、カーブ毎に設定できるサンプリングインターバルの平均値が表示されるようになりました。Audio Thread CPUと、Total Plug-in CPUの、タイマーの設定で、オーディオフレーム毎の解像度を高周波に設定し、ほかのカーブのサンプリングインターバルは200 msのまま残しました。
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Spatial Audioがゲームエンジンのジョブスケジュラーに個別のリフレクション処理や回折処理のタスクを発行し、タスクを複数のCPUコアでパラレル実行できるようになり、利用可能なCPUリソースの活用が改善され、システム全体の効率が高まりました。
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RTPC、Virtual Voice Managementのパフォーマンス改善
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Crankcase REVというソースプラグインの実行速度が、今までの4倍から10倍も速くなりました。
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ADPCMコーデック、Opusコーデック:
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今までのADPCMエンコーダを置き換え、より高いエンコーディング品質のPlatinum Gamesのバージョンに変えました。今までのADPCMファイルの互換性は維持されます。また、移行ノート There is no longer an Encoding Mode property associated with the ADPCM codec も合わせて参照してください。
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Opusコーデックを version 1.3 に更新したので、品質が改善され、特に低ビットレートのスピーチ(セリフ)の品質が改善されました。今回の更新で、Ambisonicsも完全にサポートされます。
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Androidのレイテンシ:
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Android 8.1以上で稼働するデバイス用に、AAudio低レイテンシAPIにWwiseで対応するようになりました。
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ハードウェアによって、ボイススターベーションが発生した場合に、Wwiseがバッファサイズを自動的に増やします。
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WwiseCLI (Wwise Command Line Interface)
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WwiseCLIが -LoadProject というオプションを対応するようになり、プロジェクトのロードや終了を素早くできるようになりました。 -Save と共に使用すると、プロジェクトの移行が自動的に行われます。
WAAPIの改善点
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WAAPIの専用タブが、新Logsビューで提供されます。また、移行ノート WAAPI Log Item Format も合わせて参照してください。
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デフォルトでWAAPIが有効になったので、最初からlocalhost接続が可能になりました。
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WAAPIのリターンの選択肢が、カスケードエクスプレッション(cascading expressions)に対応します。
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プロファイラ機能やランダマイザ設定など、その他のWAAPI改善点。
Unreal Integration の改善
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プラットフォーム専用の初期化設定と、生成されたSoundBankフォルダが、公開され、UE4プロジェクト設定から設定できるようになりました。
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GetRTPCValue と、 SetMultipleSpeakerEmitterPositions が、Blueprintに公開されました。
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