Strataの発案
SFXライブラリの制作者たちは過去40~50年にわたり同じような様式でコンテンツを制作し配布してきました。自分たちでデザインしたサウンドを収録、組み合わせ、ミックス、レンダリングし、テーマ別にまとめたパッケージとしてユーザに販売してきました。BOOM Library社が自分たちでデザインしたサウンドの組み立てキットを提供したように、いくつかの例外はありましたが、基本的にSFXライブラリの提供方式は初期の頃から変わっていません。
インタラクティブオーディオのニーズにより適したSFXライブラリの開発を検討しはじめたAudiokineticは、Wwiseの中核をなす価値観をそのまま革新的なアプローチにつなげたいと考えて、ユーザの生産性と創造性を強化するために、これまでにない制御能力と柔軟性を実現する製品を目指しました。それを達成する最善の方策はすぐに明白となり、クリップ編集や自動化カーブやライブエフェクトなどがすべて同梱されたマルチトラックフォーマットのSFXコレクションを提供することを決めました。これがStrataの誕生です!
Strataの概念は比較的シンプルです。サウンドデザイナーは各SFXデザインのレンダリング後のバージョンと、そのレンダリングサウンドの作成に使用したREAPERプロジェクトとソースサウンドを入手できます。Strata上でレンダリングファイルを再生してコレクションを簡単に試聴することが可能で、必要であればマルチトラックプロジェクトをカスタマイズすることもできるため、ユーザは最終的な結果を自分で完全にコントロールできます。
マルチトラックフォーマットであれば、どのようなサウンドもミキシングしなおしたり、調節したり、トラックやステムの削除や追加ができるため、ユーザの目的に完璧に合う調整が可能となります。今までレンダリング後のサウンドを聞きながら、ビジュアルとうまく合わない要素を1つだけ取り除きたいと感じたことはありませんか。Strataではそのレイヤーをミュートさせてもう1度レンダリングするだけで済みます。
Audiokineticはソフトウェア開発会社でありサービスプロバイダーです。新たにサウンドデザイン部門を立ち上げてStrataを1から構築するのではなく、定評あるコンテンツプロバイダーと提携すべきだということは一目瞭然でした。まず1社のコンテンツプロバイダーと協力してStrataの開発と発売をすすめ、続いて新しいパートナーたちに声をかけようと考えました。このプロジェクトについてBOOM Libraryに提案したところ、すぐに賛同してくれました。BOOM Libraryはそのコンテンツの品質が高く評価されているだけでなく、特にビデオゲーム業界を専門としているため、私たちにとってぴったりのパートナーでした。
Strata アーリーアクセスユーザたちの声
3年近く開発をすすめ、数か月前に北米やヨーロッパを拠点とするインディー系やAAA級のビデオゲームデベロッパ数社とオーディオコンテンツクリエイター数人に声をかけ、Strataについてのフィードバックをお願いしました。私たちは特別なものができたと自負していましたが、やはりプロのサウンドデザイナーから素直なフィードバックを直接受け取ることは、柔軟に対応しながらニーズに応える製品をつくるために重要です。
しばらくStrataを使用してもらってからヒアリングを行い、彼らの情熱(と前向きな批判)に触れた私たちはかなり興奮しました。教えてくれた主な内容をここで簡単に紹介します。
Strataのよい点
「Strataこそ必要としていたもの」
Strataと比較してほかのライブラリは「重い」「ビジー」「つくり込みすぎ」と感じられ、そのままでは使いづらいというのが多くのアーリーアクセスユーザたちの意見でした。音をトーンダウンする必要が出てくることがよくあり、手間がかかったり最初から不可能であったりします。StrataではコンテンツがマルチトラックのREAPERプロジェクトとして提供されているため、レンダリングされた最終サウンドの中のごく小さなコンポーネントだけに的を絞り、細かい操作を容易に行うことができます。
Strataは巨大である
ほとんどの方がStrataに入っている大量のコンテンツに言及しました。あるオーディオディレクターは「膨大な量のコンテンツだけでも驚異的ですが、このような大がかりなスケールで見ることができるのも壮観です」と言いました。多くの若手サウンドデザイナーたちは、仕事をはじめたばかりの頃にStrataがあれば、ほかのどのライブラリを購入する前にもStrataサブスクリプションを開始したであろうと言っていました。
Strataを作成する時に必要なREAPERプロジェクトをすべて揃えた私たちの、圧倒的な労力に対する賞賛の声もいただきました。あるユーザはStrataのサウンドがわずかにバリエーションを変えながらリピートし、それがサブレイヤーに見える化されていることを発見した時に感心したと言いました。これらのバリエーションを活用することで1つのサウンドの変化版をほぼ無限に作成できることに彼は気づいたのです。
Strataは専門家の技を教えてくれる
これはStrataを使用した方全員から寄せられた意見です。若手であれ長年の経験者であれ、ほかのデザイナーがどのようにサウンドをつくるのかを知ることがすばらしいインスピレーションとなったようです。Strataで発見したいくつかの技を今後の自分のサウンドに応用してみたいと教えてくれた方もいました。多くの参加者の意見を代表するかのように、ある回答者はStrataが可能にする技やノウハウの移行はファンタスティックだと言いました。
大手教育機関の講師からは、やっと授業でサウンドデザインを教えるために役立つツールが見つかったと感謝されました。同様に別の会社のサウンドデザイナーも、数年前に卒業した学校ではギターやアンプやキーボードやパソコンがいくらでもあった一方、Strataのようなものは欠けていたと教えてくれました。
Strataに含まれるVSTプラグイン
WwiseのエフェクトプラグインがVSTにポートされ、Strataに含まれている点が最高だと言う人は複数いました。VSTプラグインのおかげでエフェクトを事前にレンダリングした方がよいのか、それともダイナミズムを優先しRTPCやステートをエフェクトの設定に添付してランタイムに処理ができる生の状態とした方がよいのかを、デザイン段階に確認することができるため、デザイナーはかなり便利に感じたようです。
Strataに含まれているBOOMの新しいENRAGEプラグインも高い評価を得ました。ある人は、マルチモジュラーFX処理ツールENRAGEは制作者が作成したとおりにSFXを再びレンダリングするために必要なすべてのプラグインを確保する上で、Strataに必要不可欠であると指摘しました。もちろん自分のプラグインを使うこともできますが、クリエイティブに制作するために必要なものはすべて最初から揃っています。
Strataはシステムサウンド用に特に便利である
あるAAAスタジオから出たコメントですが、このスタジオではサウンドデザイナーたちがStrataの各種コレクションを「デザイン音」と「システム音」(ゲームシステムの一部となる音)の2つのカテゴリに分類できると言いました。
- デザイン音とはCreaturesやRoboticなどのようにデザイナーがプロトタイプ用に使うことのできるコレクションのことで、必ずしもゲームの最終サウンドに使われません。ゲームには自分たちのフランチャイズ独自の生物サウンドを使いたいとのことでした。たとえレイヤーを部分的に使用したとしても、レンダリングされた音そのものは必ずしも使わないということでした。
- 一方、システム音の構築に役立つ音としてPhysics、Footsteps、Doors、Ambience、Movement、Close combat、Interactive objectsなどのコレクションは価値があると感じたようです。これらは特徴的な音ではなく記憶に残らないかもしれませんが、ランタイムの実行時に最も柔軟性が求められる類の音です。1つの音に複数のレイヤーがあり、各レイヤーのバリエーションが多数あるため、柔軟性を確保できます。
Strataはほかにもすばらしい面がある
- エフェクト: ライブラリを構築するために使用した各種プラグインをすべてアクセスして微調整できるのは、まるで天の恵みです。
- アンビエンスコレクション: アンビエンスは事前に複数のチャンネルフォーマット(ステレオ、Quad、Octo、5.1、7.1.4、アンビソニックス等)に設定してあり、かなり時間の節約になります。
- 効率性: Strataの使い方を習得するまでは時間がかかりますが、自分の応用範囲が拡大するにつれ、将来的な時間の節約が期待できます。
- ReaWwise: ReaWwise はAudiokineticのREAPER拡張機能で、REAPERからWwiseへの音のレンダリング、命名、転送を簡素化してくれます。ReaWwiseはStrataと分けて使用することができますが、評価期間中に試してみた人たちはその使いやすさと使った時の生産性の向上を評価していました。
改善の余地がある点
ユーザフィードバックは概ねとてもポジティブでしたが、今後の参考になるような指摘もありました。それもありがたいフィードバックで、Strataをさらによくするためのチャンスを与えてくれます。
ワークフロー
レンダリングサウンドをSoundminerやREAPERのデータベースから再生している時に、クリック1つで例えば関連REAPERプロジェクトが開き、ちょうど再生場所に再生カーソルがくるような機能を希望した人が1人いました。確かにこれがあるとサウンドデザイナーがクリエイティブな気分を維持しながら生産性を上げることができるため、この機能のリクエストは今後のイテレーションで検討する優先項目としました。
UCSメタデータ
ほとんどの評価者がすべてのソースやレンダリングファイルがUCSメタデータに準拠していることを支持してくれましたが(私たちがどれだけの熱意と努力を注いだのかを理解してくれたようです!)、エキスポートされたオーディオファイルがUCSシンタックスに対応していることを確認する機能がReaWwiseにあればよいと言われました。これも今後のアップデートでReaWwiseに追加することを検討します。
またUCSの命名規則についてあるコンテンツプロバイダは、どのプロジェクトで仕事をするにもスタジオの命名規則に従う必要があるため、必須とは言えず嬉しいおまけのようなものだと話していました。
REAPERのプロジェクト設定
ユーザドキュメントではStrataを使いこなして一部ワークフローを最適化するために、REAPERのプロジェクト設定で特定の項目を有効にすることを推奨しています。ところが中にはこの設定がユーザの普段のREAPERの使い方と干渉する場合がありました。REAPERのインストール設定を非常に細かくカスタマイズする人もいることを知っていますので、比較的近い将来に対処方法を見つけて提供する必要があると思われます。
REAPERプロジェクトを壊してしまいそうな不安
コレクションのプロジェクトを使用して実験したいと思っても、何かを壊してしまうのではないかと不安に感じた人が何人かいました。これは単純にプロジェクトのコピーを作成して同じフォルダに保存しておくことで、これでオーディオソースへのリファレンスをすべて維持できるため、対策として推奨します。ところがこのアプローチは必ずしも一目瞭然ではなく、一部の人にとって不都合があるようなので、さらに検証が必要です。
まとめ
以上が一番手のユーザたちの感想です。そして、いよいよこれからが本当のリトマス試験です。あなたもアーリーアクセスユーザたちと同じような価値をStrataに見出すでしょうか。きっとそうなることを願います!。Strataの 無料サンプルコレクション にぜひ登録して体験してみてください。このパッケージには、最初にリリースされた14のコレクションの一部分だけが含まれます。Strataの威力がわかるはずです!
最後に、Strataに興味をもっているけれど今すぐサブスクリプション開始すべきか悩んでいる方に、注目していただきたいことが2点あります。
- Strataと共に14のコレクション群をリリースしましたが、今後2年間にわたり毎月1〜3個の新コレクションを計画的に追加していく予定です。今後のコレクション予定が リリースカレンダー に表示されています。
- 早期価格は驚くほどお得です。今すぐサブスクリプションを開始することで、このお手頃な価格は3年間適用されます。ぜひ後悔しない選択を! ;-)
よろしければ以下のコメント欄でご意見をお聞かせください。Q&Aセクション では、ほかのStrataユーザと質疑応答のやり取りをすることもできます。
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