Wwiseの便利なテンプレート機能

Wwiseの使い方やツール

WwiseTemplates_01.png 

ゲーム開発者のツールボックスにある数々のツールに共通して言えることですが、Wwiseは奥が深く複雑なプログラムで、付随するドキュメンテーションは普通の小説よりも長編です。今時、ドキュメンテーションを最初から最後まで読む時間なんて、あまり存在しません。今回は、マニュアル書を読んでない方には発見しにくい、単純で見逃されやすいWwise機能をご紹介します。フォルダ構造をインポートして、それにWwise構造をテンプレートとして適用すると、作業中のプロジェクトに、既に存在する構造と似たレイアウトの構造を構築することが、素早くできるのです。多少の事前準備をすればマウスクリック数回で、複雑な構造をWwiseで設定する作業を自動化でき、夢のように簡単になります。

事例としてImpact(衝撃)の強さによって決まるガラス瓶の弱い衝撃サウンド(object_glass_bottle_impact_soft)と強い衝撃サウンド(object_glass_bottle_impact_hard)をブレンドしたインパクトサウンドの設定と、衝撃が一定の強度以上になった時だけに再生されるバウンス(bounce)スイートニングの追加レイヤがある場合を考えます。また、衝撃の強さや衝突する物の固さに応じて、フィルタリングとピッチのランダム化も取り入れます(RTPC使用)。これらを以下のように、WwiseBlend Containerと、いくつかの子Random Container (それぞれに複数のオーディオファイルが入る)を使って整理しました:

 Wwise_template_blend_container_layout-1024x472.png

 

それでは、これらの構造をフォルダに置き換えてみます。この構造レイアウトをWwiseの他の場所でも使いたければ、まずWindowsで同じ構造レイアウトを模倣して構築します。Wwiseでいう構造(つまりAudiokinetic用語でContainer、Actor-Mixer、Virtual Folderなどと呼ばれるもの)に対して、Windowsの対応するフォルダを作成して、新しいサウンドをインポートする時にWwiseがガイドとして使えるようにします。上図で示したImpact構造をWindowsのフォルダレイアウトで復元すると、以下のようになります:

 

3-_PC_folder_layout_02.png

 

先のWwise画面のBlend Containerと似ていますが、マスターフォルダとなるobj_sheet_metal_impact(鉄板の衝突)があり、その中にobj_sheet_metal_bounce(鉄板のバウンス)、obj_sheet_metal_impact_hard(鉄板の強い衝撃)、obj_sheet_metal_impact_soft(鉄板の弱い衝撃)の3つのフォルダがあります。3つのフォルダの中に、それぞれ該当する複数のWAVファイルが入っています。Windows側のフォルダ構造がWwiseで作ろうとしている構造のミラー構造なので、Wwiseにインポートすれば、バス、RTPC、クロスフェードなどが作成された状態になります!(ちなみに、私はいつもフォルダ構造をOriginalsフォルダの中に直接つくりあげて整理した状態にしておいて、File Managerで改めてWAVファイルやフォルダを並べなおさなくても済むようにしています。)

Wwise階層と似た形でフォルダを整理できたら、WwiseAudio File Importerを開き、"Add Folders" ボタンをクリックします。次に、先ほど作成した構造の最上位フォルダ、つまり今回の例では "obj_sheet_metal_impact" フォルダまで移動して、"Select Folder" をクリックします。このフォルダがAudio File Importer上で開きます。これで、各フォルダレベルに、Wwise側のRandom ContainerSequence ContainerBlend Containerなどの構造を1つ指定できます。しかし本当の「マジック」が起きるのは、Template列の矢印マークをクリックして"Browse"を選択して、模倣したいレイアウトやパラメータが存在する既存の構造を選んだ時であり、以下のように表示されます:

 

4-_Wwise_template_layout-1024x657.png

 

この図の通り、Wwiseは自動的に、それぞれのフォルダがどの構造に該当するのかを理解して、フォルダ側のアセット数の方が多い(または少ない)場合にも対合できています。必要に応じて中身を移動させてから、Importをクリックすると、テンプレートの構造に対するミラー構造が新しくつくられ、テンプレートと同じRTPC、クロスフェード、その他の構造が適用されます。

 

5-_Wwise_template_blend_container_new-1024x487.png

 

Wwise側の既存構造をテンプレートとして利用してフォルダ構造をインポートできたら、あとはあなたが好きなだけ(またはゲームが必要としているだけ)いじって調整できますが、手間のかかる基本作業は、簡単なファイルの整理をしただけで完了してしまいました。それでは、テンプレートづくりをお楽しみください!

 

Templateについて、更に詳しく

 

ブラッドリー・メイヤー(BRADLEY MEYER 
Sucker Punch Productions オーディオディレクター

オーディオディレクター及びサウンドデザイナーとして、ゲームサウンドデザイン、システムデザイン、スクリプト制作、インテグレーション、声優監督などに18年以上携わる。

Linkedin      @AuralSurgeon

 

この記事は、最初にDesigning Sound に掲載されました。

ブラッドリー・メイヤー(BRADLEY MEYER)

オーディオディレクター

ブラッドリー・メイヤー(BRADLEY MEYER)

オーディオディレクター

オーディオディレクター及びサウンドデザイナーとして、ゲームサウンドデザイン、システムデザイン、スクリプト制作、インテグレーション、声優監督などに18年以上携わる。

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