『Star Warsジェダイ:サバイバー』はRespawn EntertainmentがLucasfilm Gamesと共同開発した、銀河をめぐる3人称視点のアクションアドベンチャーゲームです。『Star Warsジェダイ:フォールン・オーダー』の5年後を描く、ストーリー性の高いシングルプレイヤータイトルです。
今回はオーディオチームとのインタビューを通し、巧みにつくられたゲームのオーディオや、彼らのビジョン、デザイン、実装技術などについて聞きました。パーティ仕様のライトセーバーの音がパーティらしく聞こえるしくみ、これまでのシリーズにわたり培われてきたデザインに敬意を表しつつキャラクターデザインに独自性を加えた方法、繰り返しに気づかれないように実装時に取り入れた工夫、オーディオチームのメンバーたちのお気に入りのクリーチャー音などについて聞きました。お楽しみください!
インタビュー
ライトセーバーはスターウォーズ世界の中核にあり、銀河系において最も特徴的なサウンドの1つとなっています。ゲームプレイに必要なダイナミックな面を維持しながら、音をライトセーバーのカスタマイズ機能と組み合わせるという難題にどう備え、実践したのですか?
OC:ライトセーバーをカスタマイズした時、オーディオに影響があるのはカラーだけです(注:これは私たちのゲームの一部ですが、スター・ウォーズの物語には特に含まれません)。色の違いによる音の変更はすべて、バスのエフェクトでリアルタイムに行われます。カスタマイズするサウンドはオン・オフのサウンドだけであり、Switch Container内で切り替えています。色に関係なく、すべての音が同じバス構造を通るため、ダイナミックミキシングがすべて維持されます。
1つのライトセーバーで可能な音の組み合わせをすべて把握してみることは、面白いと思いますか?
OC:各ライトセーバーは約20種の固有スイング動作があり、それぞれ約6種のバージョンで構成され、さらにアイドル状態のループ1種、オン・オフ音約4種があります。つまり典型的なライトセーバー1つにつき、合計で約130個の個別サウンドファイルがあります。カルの場合、Wwiseで作成される色別の固有スイングの追加と、クロスガードの構え(ほかの構えは共有アセットを使用)を合計すると、カルのライトセーバーで可能な固有スイングは全2,700種ほどです。
各ライトセーバーに共通する要素はありますか?
OC:はい、スイング動作音の一部バージョンは、ほかのスイングのピッチを上下させただけのものであり、カルのライトセーバーの構えもクロスガードの構え以外はすべて同じアセットを共有し、リアルタイムに変更することで区別しています。
タイプに応じて音を変える際、メディア変更とパラメータ変更の関係はどうですか?
OC:ライトセーバーは音を犠牲にせずに可能な限り同じアセットを再利用しており、パラメータ変更に頼るように努めました。これにより一般的にミキシングが容易となり、全体的なクオリティが高くなり、イテレーション作業も楽になりました。
ライトセーバーの音をリアルタイムで変更させる、ゲームプレイの興味深いパラメータはありますか?
OC:すべてのライトセーバーにおいて、アイドリング状態のピッチやボリュームの変化は、オブジェクトの速度に依存しています。さらにアイドリング音はスイング音にダッキングされます。特にカルの場合は敵の戦闘員の数、再生中のすべてのゲームサウンドの全体的なボリューム、コンバットステートなど、いくつかの変数を考慮したダイナミックなミキシングが頻繁に行われています。
「パーティー」セーバーが華やかに聞こえる理由と、マゼンタが一番よい音である理由を教えてください。
OC:パーティーセーバーは基本的に偶然の産物です。パーティーセーバーは単純に色を急速に切り替えているだけであり、同時にオーディオエフェクトを制御するRTPCで、事前に設定されたプリセット間が急速に切り替わり、これが混沌としたパーティーサウンドとなり、そのまま使うことに決めました。私もマゼンタがお気に入りの1つです。スター・ウォーズにおいて超一般的な色以外については、標準的なライトセーバーと異なる音になるよう、少し自由につくりました。具体的にはマゼンタはいくつかのプラグインで処理していますが、そのサウンドの大部分がWwise Tremoloから来ており、レートを1000Hzに設定し、デプスを50%程度に設定することにより、独特の鳴り響くトーンを出しています。
キャラクターのカスタマイズは、ゲームプレイやNPCのフォーリーサウンドにどのように影響しますか?
AF: カスタマイズすることはプレイヤーたちが最も希望した機能の1つであり、私たちはそれをフォーリー面で最大限にサポートしたいと考えました。カルが着用する服をすべてカバーできるよう、さまざまな素材を選び、それぞれを完全にレコーディングしました。徒歩、ジョギング、疾走などの動きに加え、フォーリーアーティストの腕、胴体、脚を別々に収録し、複雑性を1段階増やしました。これにより、プレイヤーが選ぶ服に応じて組み合わせて使うコンテンツを数多く用意することができました。例えばプレイヤーがデニムのパンツ、布のシャツ、レザーのジャケットを選択した場合、本物らしく聞こえる音を確実につくりあげることのできるシステムを達成しました。
ゲームのいたる所に登場するNPCの多くは、ランダムに採用されるいくつかの胴体、頭、脚があります。私たちは前述の手法と似たアプローチでこの問題に取り組みましたが、小道具のレイヤーも追加し、プロスペクターが持つ道具のジャラジャラする音や、武装したキャラクターのブラスターの揺れる音などをトリガーできるようにしました。収録と実装の両面においてモジュールに分けたアプローチは、最初こそ大変な作業量でしたが、結果的に最終段階でかなりの時間の節約に繋がりました。
さまざまなOutput設定(スピーカー、ヘッドフォン、モノラル)や、Dynamic Rangeモード(デフォルト、ミッドナイト、Studio Reference)がありますが、どのような特別な配慮やテクニックを用いましたか?これらのモードを実現する上で、役に立ったガイドラインやプロセスはありましたか?
NVK:『Star Wars ジェダイ:フォールン・オーダー』と比べ、Master-Mixer Hierarchyの設定をかなり変えました。『Star Wars ジェダイ:サバイバー』は3Dオーディオ対応を追加し、さまざまなダイナミックレンジのためにMastering Suiteを活用しました。3Dオーディオに対応するために、システムオーディオオブジェクトをつくり過ぎないようにしながら、空間的な観点から最良の結果を出せるよう、下流のAudio Busのバス構成の設定を特に注意しました。
質問に対する答えとしては、プレイヤーがスピーカー、ヘッドフォン、モノラルのいずれかを選択した時にパンニング(スピーカーパンニングまたはヘッドフォンパンニング)が変更されるか、チャンネル出力が1.0に変更されます。出力に応じてダイナミック性も多少調整されます。ヘッドフォン用にミックスを圧縮してもあまり意味がないことが分かり、ヘッドフォンでは完全なダイナミックレンジ、つまりStudio Referenceを用いています。Studio ReferenceではMastering Suiteにおいて有効にしたエフェクトは、-2 dBのリミッタのみです。スピーカーでダイナミックレンジをデフォルトとした場合、軽いマルチバンドコンプレッションを適用して全体的に滑らかにしています。ミッドナイトモードではマルチバンドコンプレッションのレシオを少し上げ、リミッタも-6dBに設定しています。もう1つの違いとして、モノラル時のMastering Suite以前のボリュームを-3dBだけ下げています。これはモノラルの場合、ステレオチャンネルのサミングの結果、リミッタにより強くヒットしていることに気づいたためです。
『スター・ウォーズ』の世界に登場する乗り物は特徴的で、頻繁に登場します。戦闘機からスピーダー・バイクに至るまでビークルが多岐にわたり、これらのサウンドを維持しつつインタラクティブな領域に拡張することは、多様かつ特殊な難しさがあったと思います。プレイヤーが操作するビークル対応と共に、ストーリー性にも応じるために、配慮した点や駆使したテクニックを教えてください。
AB:ゲームアンビエントに出現する宇宙船やプレイヤーが遭遇する宇宙船の多くは、ループを基本とするかなりシンプルな設定で動いており、実はプレイヤーはゲームに登場するほぼすべての宇宙船を操作できないため、セットアップは比較的簡単です。それぞれの宇宙船にコアループが1、2個ほどあり、宇宙船によって違う動きは、スウィートナーループを追加して表現しています。宇宙船がリスナーから遠ざかる時は、宇宙船の基本ループをクロスフェードさせる遠方用レイヤーを使います。ミックス全体の邪魔にならないよう、これらのループを簡略化しており、フィルターを適用して処理してバックグランドに入れています。最後に、私は『アンドー』のタイファイターのサウンドデザインに大いに影響を受け、すれ違いざまにあの腹に響くようなエネルギーを加えたいと思い、一部の宇宙船に減衰をタイトに締ったディストーションの強い「スラスタ」ループを設定しており、すれ違う時にローエンドが突進してくるようになっています。
これらのループをすべてミキシングし、速度、角速度、スプラインを通る率など、各種RTPCで変化させています。こうすることにより宇宙船は動きに合わせて有機的に反応し、プレイヤーの周囲を動く時にバリエーションや深さが増します。さらにスクリプトに基づくシーケンスでは、ストーリーの関係で宇宙船に注目してもらいたい時などに風切り音やその他の音をトリガーしてエンジン音とブレンドさせ、高まる迫力をプレイヤーに感じてもらいます。
ビークルに息を吹き込む中で、特に面白かったものや苦労したものはありましたか?
AB:おそらく私が一番好きなStar Warsの音はタイファイターのエンジン音で、多くの人にとってもフランチャイズのなじみ深い音の1つであると思います。このためプレイヤーが正しいと感じる音にすることが大変重要でした。幸運なことに『Star Warsジェダイ:フォールン・オーダー』の音をベースに構築することができました。
近接戦闘に重点を置いたゲームであり、宇宙船はゲームの大きな要素ではないため、ミックスの中で適度な存在感を保ちつつ、主張しすぎないようにすることは非常に難しかったです。多数のタイファイターが飛び交ういくつかのシーケンスにおいては、宇宙船システムから出されるミックスを確実に制御きるようにすることが大変でした。タイファイターのエンジンは非常に調性であり、すぐにノイズの固まりとなってしまいました。さまざまな状況におけるエンジンループのさまざまなバージョンを細かく調整し、減衰やRTPCなどが適切であることを確認し、各種の遭遇が最高のプレイヤー体験に繋がるよう、多くの時間を費やしました。
乗用クリーチャーについての具体的な質問です。サウンドデザインをすすめる中で、クリーチャーを飼いならす過程にどう対応しましたか?乗り物となるクリーチャーを構成する音、声、ダイナミックな要素などをセットとして定義する際、特別な配慮はありましたか?
AB:すべてのクリーチャーAIや乗り物に呼吸システムを設定し、呼吸がクリーチャーのほかの音声と重ならないようにしました。Wwiseのマーカーコールバックを使い、必ず同期するようにし、AIのストレスレベルに反応するようにしました。つまりクリーチャーが戦いを続けて長く走るにつれ息切れし、呼吸のペースがはやまります。このシステムの長所は0から1のfloat値で呼吸サイクルの進行を追跡できる点で、その値をアニメーションチームに渡し、胸の上下のアニメーションのブレンドを追加することができます。例えばスパメルは、このシステムで呼吸音と胸のアニメーションを同期させています。
おなじみのランコアやそれぞれの惑星に生息するクリーチャーなど、クリーチャーデザインはゲームプレイの基盤であり、同時に多様です。各クリーチャーのセットをデザインする上で、どのようにしてクリーチャーの個性を表現しながら、シリーズのこれまでのクリーチャーデザインに敬意を払ったのですか?
NVK:ランコアのデザインにあたり、当初の音のつくり方を研究することからはじめました。J. W. Rinzlerは著作『The Sounds of Star Wars』において、うなり声をつくるために近所の飼い犬を録音してピッチを下げたと書いています。私は小さなイタリアン・グレイハウンドである愛犬ゾーイを録音してピッチを下げ、ゲームのランコアのうなり声の一部に使いました。ランコアのオリジナルのうなり声はかなりフランジャーが適用されていますが、私はよりリアルに感じられるよう、わりと控えめにしました。ランコアの咆哮に関しては、映画のオリジナルの咆哮と、私が収録したさまざまな動物の鳴き声を重ねてつくることもありました。私はオリジナルで聞こえてくる動物レイヤーを推察するようにし、力強さを出して今回のゲームになじむように違う処理を適用しました。映画の内容を尊重して使われた技術を研究すると共に、銀河系に新たな要素を取り込むことも重要であると思います。かなり前のことですが、私はモバイルゲーム『スター・ウォーズ/銀河の英雄』のランコールのサウンドデザインを担当しました。今回再びデザインするチャンスを得て、サウンドデザイナーとしての自分の成長を実感でき、嬉しかったです。
AB:私はモーグーをデザインする機会に恵まれましたが、モーグーはワンパにインスパイアされ、ワンパの遠い親戚のようなものです。それを念頭に関連性を出しながらも、独自性を持たせるようにしたいと思いました。はじめにオリジナルの映画でBen Burttがどのようにワンパを表現したのかを調べ、それを出発点としました。Nick von Kaenelが言ったように、私たちは『The Sounds of Star Wars』を参考にしましたが、彼は音源として象やアシカに言及しています。私はそこからスタートしましたが、すぐにほかの動物、自分の声、スライム音の自分の収録などを加えはじめ、それほど出演の機会がなかったワンパより声の幅が広いモグの声の合間を埋めました。何度かの修正を経て、モグの主要レイヤーの多くはセイウチやヒヒとなりましたが、遠い親戚のワンパの感触も残っています。
繰り返しに気づかれないように、どのような動的な工夫を実装に取り入れましたか?
AB:ゲームにおける繰り返しは厄介なもので、あまりにも少ないとゲームが単調になり、多いとまとまりがなくなり印象的なサウンドを聞き逃してしまう可能性があります。プレイヤーの周りに生じるアンビエンスやサウンドはバリエーションが多すぎるということはないため、エミッター用のループする大きなランダムコンテナなど、一般的なテクニックを採用しました。アンビエントに多数の生物を投入することを意識し、鳥類、哺乳類などのカテゴリに分け、時には1つのレベルに1種別につき10種類以上を登場させるなど、細かく気を配りました。レベル全体のさまざまな領域に各種の動物を意図的に点在させ、レベルがすすむにつれ各種の動物の存在感を増減させ、サウンドスケープを微妙に変化させてゆきました。
その上、できる限りアンビエンスが動的になるように努めました。サウンドスケープの異なる部分を駆動するために、簡素ですが非常に効果的な風システムがあります。ゲーム内のすべての風音はActor-Mixerの風バスに送られ、ここに風レベルのRTPCをコントロールするメーターがあります。このRTPCを使い砂漠で砂埃が金属板にふりかかる強さや、がたついた建物のきしむ音の大きさなど、さまざまな音の大きさを変化させます。これによりサウンドスケープのバリエーションがひと段階増え、その変容の程度はプレイヤーが気づかないうちに感じ取るものです。
NVK:Alexの説明に少し補足します。サウンドチームはゲームの世界に見事に大量のコンテンツを投入したため、ゲームをすすむうちに世界が変化してゆきます。このゲームを何年もプレイし、音を聞き続けたことを考えると、繰り返されると感じる音には敏感に反応し、ゲームの出荷前に発覚する可能性が高いです。何回も聞くと分かっている音は、デザインの仕方に配慮することが重要であるとも思います。記憶に残る目立つ音になるよう調性を重視しますが、よく耳にする音は例外です。プレーヤーが何万回も聞くことになる音は、繰り返しを感じにくいノイズベースのデザイン手法を選びます。当然そうでない場合もあり、例えばライトセーバーは調性をかなり重視しています。一方トラバーサル音やフォースパワーなどは、よく再生される音はノイズをベースとしてあり、パワーアップ能力など出番の少ない音ではより調性を重視していることに気づくかもしれません。
サウンドデザインや実装の面において、お気に入りのクリーチャーはいますか?
AB:私が担当したクリーチャーの中で一番好きなのはラウカです。すべてのクリーチャーの中でデザインと実装が最もシンプルであると思いますが、だからこそこれだけよい音になったのだと思います。その声の95%は私がプラスチックのギフトカードを弓のように曲げているだけのことで、残りの音を丸くするために少し唾液音やくちばしの開閉音を追加しただけです。ライブラリの音を使うのではなく、自分でしならせた音を使うことにより可能な限りバリエーションを増やすことができ、結果的に大量の異なる音の中から選択することができました。まったく異なって聞こえるバリエーションであっても、同じ感情表現を示すのであれば、同じコンテナに入れることがありました。ラウカのデザインで最も難しかった点は、単純にどの音がどのアニメーションに合うかを選ぶことでした。
NVK:私もAlexによるラウカのデザインが大好きです。自分が担当したクリーチャーの中のお気に入りは、ネッコーだと思います。呼んだ時に心に響く鳴き声をつくることに集中しました。呼吸システムも活用しており、乗っている時間が長くなるほど息遣いや鼻息が徐々にはやまり、激しくなります。
以前にもインタラクティブであった「フォース」の場合、ほかのゲームやメディアのフォースの既存デザインを活用することができましたか?
NVK:卓越したサウンドのStar Warsゲームがたくさん出ています。特に『Star Wars バトルフロント』(2015年)の音は感動しました。はじめてこのゲームを聞いた時に圧倒されたのを覚えていますが、それはStar Warsのサウンドがビデオゲームでこれほどうまく再現されたことはなかったと思ったためです。映画のサウンドをゲームに反映できた彼らの偉業は、いまもゲームオーディオ史上最高の成果の1つであると思います。
フォースのパワーに関して、かなり自由にサウンドをデザインできました。Kevin Notarがフォースのパワーの基礎デザインの多くをこなしており、私たちはそのデザインスタイルを発展させ足してゆきながら、カルというキャラクターや彼の能力の音を開発しました。
フォースパワーはよく、大規模な破壊活動に使われます。物理オブジェクトやその音に関して、どのような特別な配慮がありますか?
AB:少なくとも私にとって、物理オブジェクトは正しくつくることが大変難しい音の1つです。フィジックスオブジェクトの音をよくする要素の多くは実装やミックスにあり、実際の音よりもフィーリングの方が重要と思うほどです。
インパクト音はネスト化されたスイッチの階層として整理しています。第1のスイッチを切り替えるのはオブジェクトの速度RTPCであり、インテンシティに基づいて音が入れ替わります。そのRTPCを音のボリューム変化にも使い、音の粒度を調整しています。第2のスイッチの目的は、インパクトを引き起こしたのがプレイヤーであるかどうかを判断することです。その理由は、プレイヤーのインパクト速度に倍数効果があり、プレイヤーとして物を押すことが簡単で楽しくなるような設定ですが、逆に音のインテンシティに影響することもあるためです。
物理的な音のアセット制作において「量」が「質」に繋がることが多く、ある音の1つのバージョンが次のバージョンとできる限り異なるようにする手法が、ほかのどの処理タイプよりも役に立つと感じました。例えばドレッジャー・ゴージ内部のセクションに吊り下がっている鎖の制作をはじめた当初、最初のトライでは強いインパクト音は、長さや跳ね返る鎖のリズムがどれも似ていました。これでは似すぎていてつまらないと思い、コメントなどを聞いた後、すべてのインパクト音を編集してトランジェントや「音節」が異なるよう、少し凝った編集や再収録を行いました。
スライドとロールにはそれぞれ異なるイベントを使い、RTPCも違いますが、どちらもほぼ同じ扱い方です。RTPCでボリュームやフィルターを変え、スイッチを使いサーフェスに応じてループを入れ替えます。優先度が高いと判断されたいくつかのオブジェクトは、サーフェスをカスタマイズしてアセットにベイクしましたが、多くの場合はメインの「オブジェクト」ループと、ほかの物理オブジェクトと共有の「サーフェス」ループを合算して同時に再生することで達成しました。
専用のサウンドデザインや実装が必要なデザイン要素やパズル要素が、ゲーム内に多数あります。このような要素と連動させて魅力的なサウンドを作り、ゲームプレイを強化すると同時に完了した時の達成感を音で提供する例はありますか?
AB:カンティーナ内にいる時、ジュークボックス風に流れるミュージックトラックがいくつかあります。私のチームの目標の1つはプレイヤーがゲーム内をすすみ、さまざまなキャラクターと出会う中、カンティーナが修復中であると感じさせることで、音楽チームと協力してカンティーナの状態に応じてカンティーナのミュージックトラックを加工しました。
ゲーム初期のカンティーナは荒れ果てているため、すべての音楽に複数の処理を適用し、まるで壊れたスピーカーから流れてくる悪質な響きと音質にしています。一方アッシュやDD-ECを仲間に入れた後、彼らがカンティーナやスピーカーを修理し、音楽は格段に質が上がったスピーカーから流れはじめるため、処理後の音楽はオリジナルにかなり近くしています。プレイヤーがジュークボックスのUIを操作すると処理は停まり、加工されていない通常のミックスが聞こえはじめます。
ジェダイ瞑想場にあるパズルで、サウンドデザインの観点で難しかったものはありますか?動的な対応やこだわった実装はありますか?
AB:コーボーテックのシステム化されたパズル要素を手がけた時に苦労したのは、橋の音を橋らしくするすることでした。橋の停滞するアンビエントをミックスにうまくおさめる方法が大きな課題でした。いくつかのテクニックを試し、例えばスプラインに沿って音を移動してみたところ、橋にに近づいた時に位置的にかなりずれている感じとなり、プレイヤーがその上を歩くことを考えると、これは問題でした。最終的にループにマルチポジションのエミッターを使うことで解決しました。橋が伸びた時に必要なエミッター数が計算され、ブリッジの全長にわたり等間隔に配置されます。すると橋のどこに立っていても音が常に橋から発せられているように感じられます。
『Star Warsジェダイ:サバイバー』のオーディオ|Wwise Tour Hilversum 2023
2023年にヒルフェルスムにおいて開催されたWwise Tourで、Nick von Kaenel氏、Alex Barnhart氏、Colin Grant氏が、この壮大なゲームの実現にWwiseを活用した方法を明かしてくれました。
コメント