Wwise Audio Lab (WAL) は、Unreal Engine 4で開発されたオープンソースの3Dゲーム環境で、Wwise Launcherから入手できます。WALの中で、UnrealプロジェクトのソースやWwiseプロジェクトを実際にさわり、探検したり試聴したりすることで、スペーシャルオーディオや3Dオーディオの理解を深めることができます。
WAL (Wwise Audio Lab) は2017年にリリースされて以来、Wwiseの最新機能をUnreal Engineで活用してインテグレーションするための、今のベストプラクティスを確認する場を提供してきました。今回のリリースでWwise 2021.1の更新や新機能が追加され、ジオメトリ情報を取り込んだダイナミックアーリーリフレクション、サウンドポータル、方向性のあるリバーブ、そしてエンドポイントで利用可能であれば3Dオーディオも入っています。WALのマップ内に配置された情報ノードを使って音伝播の現象を確認したり、ゲーム内のオプションを選択してスペーシャルオーディオとオブジェクトベースオーディオの様々なアプローチを、リアルタイムで比較したりできます。WALはWwiseやWwise Unreal Integrationの機能を使った実験や試聴用に設計されていますが、自分の今後のプロジェクト用にツールや方式の最高の組み合わせを見つけたいユーザーは、WALのプロジェクトを完全にカスタマイズして利用できます。それでは、Wwise Audio Labの2021.1.4リリースの新しい機能を紹介します!
1. ObjectベースのAudio Busルーティング
2. System Audio Deviceへのアクセス
3. System Audio Device: メーター
4. 3Dオーディオ例: キャンプファイヤーと噴水
5. 3D Audio例: ラジオ
6. マルチポジションの放射状エミッター
7. ルームトーンの統合
8. Auxバスの自動アサインと、ダイナミックなRTPCプロパティ
9. 情報ノードとドキュメンテーションの更新
10. 新WALとの完璧な再開
ObjectベースのAudio Busルーティング
WALの新しいコンフィギュレーションでは、Master Audio Busの下に以下の4つの子Audio Busがあります:
1. Positional_AudioObjects:
• [Same as Parent] このAudio Busには、メインキャラクター、アンビエンス、ドア、ラジオのサウンドなど、WALの3D Positionのある要素が含まれます。このAudio Busに送られるサウンドは、Audio Deviceによって定義された親Master Audio BusのBus Configurationを継承し、エンドポイントの出力コンフィギュレーションに依存します。
2. Backgrounds_MainMix:
• [Same as Main Mix] このAudio Busには、アンビソニックスやQuad試聴のためにデフォルトで設定されたアンビエントバックグランドが含まれます。このAudio Busに送られたサウンドはAudio Deviceに届けられ、エンドポイントによって初期化された、またはAudio Deviceに指定された、またはAudio Bus Configurationで定義されたMain Mixチャンネルフォーマットに従い、ミキシングされます。
3. UI_PassthroughMix:
• [Same as Passthrough Mix] このAudio Busには、ユーザーインターフェース音が含まれます。このAudio Busに送られたサウンドはAudio DeviceによってPassthrough Mixに届けられ、エンドポイントによって初期化されたチャンネルフォーマット(例えば2.0)にミキシングされ、スペーシャリゼーション技術による処理を受けません。
4. Environmental_AuxBusses:
• [Same as Parent] この Audio Busには、Early ReflectionやLate Reverb用のAux Busが含まれます。子バス向けにオーサリングしたBus Configurationは、Audio Deviceが定義する親Master Audio BusのBus Configurationを継承し、エンドポイントの出力コンフィギュレーションに依存します。
デフォルトのバスコンフィギュレーションは、 2021.1のオーディオパイプライン で変更された内容を利用し、すべてのアウトプットで最大限のオーディオフィデリティを実現します。様々なBus Configuration設定を試して、ルーティング戦略を変えたときのミックスへの影響を確認できます。
System Audio Deviceへのアクセス
WALは、メニュー内でオーディオシステムをダイナミックに組みなおしたり、変更結果を試聴したりできるので、スペーシャルオーディオの概念を理解するための素晴らしいリソースです。これは2021.1のクロスプラットフォーム対応System Audio Deviceのプロパティにも言えることで、3D Audio、System Audio Object、Main Mix Configurationをテストするのに使えます。
• Sound Optionsのサブメニューに"System Audio Device" を追加し、以下を提供:
• Allow 3D Audio
• Allow System Audio Objects
• Main Mix Configuration
• 以前のメニューオプション "End Point Channel Configuration" は削除。
System Audio Device: メーター
System Audio Deviceから、リアルタイムのメーター情報を見ることができる機能を、 WAL内Debug機能に追加しました。この機能を使えば、Wwise Profilerに接続しなくても、オーディオカテゴリや、振幅や、チャンネルの使用状況といった情報を、可視化して確認できます。
3Dオーディオ例: キャンプファイヤーと噴水
キャンプファイヤー(Campfire)と噴水(Fountain)を構成するサウンドのレイヤーのルーティングによって、エンドポイントで3D Audioを使って試聴する場合に考慮すべき点を、確認できるようになっています。いくつかのWwise System Output Settings (Metadata ShareSets) を使い分けて様々なMix Behaviorをアサインすることで、Audio Objectや、Main Mixや、Passthrough Mixのコンフィギュレーションの特徴を比べることができます。Audio BusのコンフィギュレーションはランタイムにWALメニューで変更でき、アンビエントサウンドの様々な要素のレイヤーのミックスに影響を与えます。
•すべての出力コンフィギュレーションで最良のオーディオを出せるようにアンビエントレイヤを調整
• 以下が含まれるように、アンビエント要素のレイヤを設定
1. キャンプファイヤー
• "Campfire Combustion" (Mix to Main)
• "Campfire Rumble" (Mix to Passthrough)
• "Campfire Crackling" (Same as Parent)
• 3D Audioが有効であり、エンドポイントで利用可能なときは、Combustion(燃焼)がMain Mixの一部としてレンダリングされ、Rumble(とどろき)は空間化のフィルタなしでPassthrough Mixの一部としてレンダリングされ、Crackling(パチパチ音)のサウンドはAudio Objectとしてレンダリングされます(デフォルトMix Behaviorに変更なし)。
2. 噴水
• "Fountain Center" (Mix to Main)
• "Fountain Far" (Mix to Main)
• "Fountain Splash" (Same as Parent)
•3D Audioが有効であり、エンドポイントで利用可能なときは、 "Fountain Center" と "Fountain Far" がMain Mixの一部としてレンダリングされ、 "Fountain Splashes" はAudio Objectとしてレンダリングされます(デフォルトMix Behaviorに変更なし)。
3D Audio例: ラジオ
キャンプファイヤーのレイヤはラジオのAudio Sourceメニューのオプションの1つにもなっていて、WAL全体で使用できます。ラジオは「村」のいたるところや、「エコールーム」という閉ざされた空間で使え、その大きさや材料をダイナミックにカスタマイズでき、パスや出力を調整できるラジオもあります。
ルーティングの機能、例、そして可能性については、WALのドキュメントで詳細に説明されているほか、ゲーム内の情報ノードにも表示されます。
ウォークスルー動画: Object-based Audio Features Hands On
マルチポジションの放射状エミッター
Wwise Audio Labは「島」という設定ですが、海岸線の波音を変更してWwiseのマルチポジションの放射状エミッター(Radial Emitter)機能を使いました。MultiPositionモードを使えば、あるEventのインスタンスを、そのレベルに追加したAkAmbientコンポーネントの数に関わらず、1つだけにすることができます。
• OceanAmbientSoundブループリントを全面的に変更
• 新しい街(Town)アンビエンスのブループリント: Town_AMB_Blueprint
• 海(Ocean)と街(Town)のアンビエントに、新規の減衰や変更した減衰を設定
ルームトーンの統合
Wwise Audio Lab全体で、トリガーボリュームの代わりにルームトーンを導入し、 AKSpatialAudioVolume を使うときのアンビエントが最もスムーズになるようにしました。
• AkAmbientZoneのトリガーボリュームを、サッカー場と噴水のアンビエンス以外から、すべて削除
• ルームトーンとしてアンビエンスを追加
• 新規の減衰を作成
• ルームの透過をより正確にするために、駅構内の小さいルームを2つに分ける
Auxバスの自動アサインと、ダイナミックなRTPCプロパティ
AKSpatialAudioVolume で Automatic Aux Bus Assignmentを利用すると、そのルームのAux Busが、ルームの大きさに合わせて自動的にアサインされます。また、ダイナミックRTPCを使えば、 AKSpatialAudioVolume のプロパティに従い、リバーブエフェクトの個々のパラメータを自動的に設定することもできます。駅構内のいくつかのルームで、Automatic Aux Bus Assignmentや、Dynamic RTPC Propertiesを適用し、Wwise RoomVerbエフェクトプラグインの高周波ダンピング(damping)、ディケイ、プリディレイの制御に使っています。
• Wwise Unreal Integration設定を更新
• Reverb Assignment Mapを追加
• Dynamicプロパティコントロール用のRTPCを追加
• 駅の AKSpatialAudioVolume に、Automatic Aux Bus AssignmentプロパティとLate Reverbプロパティを追加
Spatial Audioの新しいワークフローや機能は、以下で紹介されています:
• ウォークスルー動画: UE4でスペーシャルオーディオ (ルームやポータルを、ジオメトリ、ビジュアリゼーション、コンポーネントに合わせる)
• ウォークスルー動画: スペーシャルオーディオのラジアル(放射状)エミッターと、ルームやポータル
情報ノードとドキュメンテーションの更新
Wwise Audio Labのドキュメンテーション や、いたるところにある情報ノードが更新され、2021.1.4でリリースされた新機能が含まれています。ドキュメンテーションは英語のほか、日本語、中国語、韓国語に翻訳され、ゲーム内にある情報ノードは、英語、日本語、中国語で提供されています。
新規情報ノード:
• Audio Objectと、Audio Bus Configuration
• 放射状エミッター
• リバーブの推定
新WALとの完璧な再開
Wwise Audio Labを通して、WwiseやWwise Unreal Integrationで提供される3D Audio機能やスペーシャルオーディオ機能を簡単に試聴できます。2021.1の新機能を使い始める前に導入事例を見たいと考えている方にとって、これこそ完璧な入口です!
「Wwise Up on Air: Hands On」で紹介
2021年10月7日(木)、AudiokineticはTwitchで「Wwise Up on Air: Hands On」のライブ配信を行い、ダミアン・キャストバウアーがWwise Audio Labの新機能を説明しました。動画を見るにはここをクリック 、今後のライブ配信の通知を受け取るには 私たちのTwitchコミュニティに参加 してください!
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