この記事はCan Uzerが自身のウェブサイトに掲載したものです。
ゲーム開発において適切な命名規則とはどのようなものでしょうか?なぜそれを気にする必要があるのでしょうか?命名規則とは簡単に言うと、オーディオクリップ、アニメーション、スプライトなど、アセットのタイプ別に名前の付け方を決めたルールです。私はゲームサウンドデザイナーとしてオーディオアセットを大量に管理する立場にあり、分かりやすく一貫性のある命名規則が秩序と効率性を保つために不可欠であることを経験から学びました。命名規則に本気で取り組むことによりワークフローが劇的に改善され、エラーが減り、チーム間の円滑な意思疎通を図れます。この記事ではアセットを効率的に命名するための実践的なヒントを紹介したいと思います。
それでは、しっかりとした命名規則を設定することによる明白なメリットを最初に説明します:
- 操作や検索の効率化:イライラせずに探しているファイルをすばやく見つけることができます。
- 論理的な構成:使い勝手がよく、分かりやすい形式にファイルを整理できます。
- バッチ処理の簡素化:名前変更などの複数ファイルのバッチ処理がしやすくなります。
- 自動化の可能性:文字列処理を伴うタスクに対して強力なスクリプト作成と自動化が可能となります。
- コードの読みやすさの改善:コード内でアセット名を参照する場合、コードがすっきりし直観的に書くことができます。
- アセット間の結束:オーディオ、アート、アニメーションなど分野をまたがる一貫した命名規則により、チーム間の足並みが揃います。
- 理解しやすいアーカイブ:時を経てもファイル構成が分かりやすく、整理された状態で残ります。
- 完璧主義者も満足:個人的に嬉しい点ですが、すべてが整い揃っている状態はなんとも気持ちのよいものです。
このような強固で効率的な命名規則を定義するには、どうすればよいのでしょうか。あなたのファイル命名システムにすぐ導入できる大切な基本方針やアイデアを、実例と合わせて以下に紹介します。
強力な命名規則に見られる本質的な特徴
- 充分かつ簡潔な情報量:必要なだけの多すぎない情報量が示されます(例 ui_button_select)。
- 階層構造:一般的なものから具体的なものへ、構成が整理されています(例 environment_forest_bird)。
- 論理的なソート:アルファベット順にソートした時に、名前から意味が分かります。
- 大文字・小文字の使い分け: 大文字の使い方にブレがありません。例えばcamelCase、PascalCase、snake_caseなど、スタイルを統一します。
- 統一された連番:ファイルの予想される個数に基づく、一貫した桁数を使用します(例「01、02」や、「001、002」など)。ソートを適切に行えるよう、数字は1桁としません(例 pig_minion_1の後にpig_minion_10が来ないようにします)。
- 文法的な一致:動詞、名詞、接尾辞などの形態を統一します(例 cha_sonic_spinとするのかcha_sonic_spinningとするのか、bomb_activationとするのかbomb_activateとするのか)。
- 単語の綴りの一致:スペルがあいまいな単語は統一します(例 ambiance/ambience、flyer/flier)。
- 時制や個数の一致:現在形・過去形や単数形・複数形を途中で変えません(例 chest_destroyed対chest_destroy、coins_collect対coin_collect)。
命名規則の例
ファイル名の形式をアセット間で統一できるよう、「式」を用いて文書化しておくと便利です。以下はそのような、論理的で一貫性のある形式の例です:
type_category_?subcategory_?action_?subcategory_?01
(“?”部分は必須でないカテゴリです。)
この式に従ったファイル名の例:
- ui_button_select
- ui_button_shop_purchase
- gp_proj_fire_hit_small_01
- gp_proj_fire_hit_small_02
- gp_booster_bomb_activate
- mus_core_jungle_01
これらの例で、いくつかのベストプラクティスが実践されています:
- カテゴリが一般名から具体名へと、順番に整理されています。
- 不明瞭にならないよう、単語の短縮はひかえめです。
- 動作を表すカテゴリ(action部分)は常に動詞とし、不要な接尾辞をつけていません。
- 番号の割り当てに一貫性があり、ソートしやすいです。
ここで2種類のファイル命名の例を、Unityのプロジェクトビューでお見せします。どちらの方がより論理的、つまり整理されている(発狂しそうにならない?)方式かを考えてください
その他の留意点
- 長すぎるファイル名は避ける:ファイル名が長すぎる場合、ツールのUIがゴチャゴチャしてしまいます。本質的な情報に焦点を絞ります。
- 記述子は計画的に使う: 特定の性質について、明示するのかどうかを決めておきます。例えば、ミュージックトラック名の末尾に“loop”を追加することにより、ループする性質が明確になりますが(例 music_theme_loop)、省略することによりトラック名が短くなります。あなたの制作上のニーズに基づいて決めてください。
- メカニクスvs.テーマ:ゲームメカニクスとテーマのどちらの名前にするのかを決めます(両者の組み合わせも可)。例えばスクリプト名は“ExplodingProjectile”(メカニクス)となり、テーマは単純に“Fireball”(テーマ)となるかもしれません。一般的にサウンドデザイナーやアーティストはゲームメカニクスをテーマの観点でとらえますが、これは自然な見方です。ただし各要素の命名やカテゴリ分けをする際、ゲームメカニクス面も考慮した方が意味や背景がはっきりします。
- 適切な略語の使用:単語を省略して名前を短くしてもよいのですが、意味が通じる必要があります。一貫性のある一般的な略語を使用してください。例えば:
- gp:ゲームプレイ
- plr:プレイヤー
- cha/char:キャラクター
- amb:アンビエンス
- mus:ミュージック
大文字・小文字の区別
- 分かりやすいのは「Snake Case」:snake_case、つまり小文字を使い単語をアンダースコアで区別する書き方が、私は特に便利に感じます(例 cha_red_attack_vo)。フレーズがアンダースコアで隔離されているため、検索が簡単です(例 cha_ filters cha_ but avoids characters)。
- 強弱を表せる大文字・小文字のミックス:重要な用語を大文字表記にすることで、分かりやすくなります(例 ストップイベントを強調するために、amb_factory_main_STOPとする)。複数の単語を組み合わせたカテゴリ名においては、「キャメルケース」を使用することもできます(例 enemy_fireDemon_deathの“Fire Demon”は、1つのエンティティ)。
- その他のスタイル:「PascalCase」「camelCase」「kebab-case」など、チームの好みによってスタイルを使いこなしてください(kebab-caseは実在します。ただしトルコ人の私に言わせれば、正確な綴りはkebab-caseではなくkebap-caseです)。
避けるべき名前
- 内容のわからない名前:clip_01(背景情報もヒントもありません)。
- 区切りの不一致:awesome_sound1(数字の前のアンダースコアが欠けています)。
- 自然言語の構成:PickupGreenEmeraldでは、ソートや拡張が困難です。代わりに、ItemGemEmeraldGreenとします。
- 階層の不一致:boss_enemy_eggmanではなく、論理的にソートできるenemy_boss_eggmanとします(“enemy”の方が“boss”より広範囲)。
- 桁数の不一致:「GreatArt_1、GreatArt_2、GreatArt_10」とせず、「GreatArt_01、GreatArt_02…」とします。
- 謎の省略:mus_stng_lvl_comp(え…何?)。
- 長すぎる名前:sfx_env_forest_daytime_birds_chirping_loop_ambient_lowIntensity_01.wav(あいたた…)。
- バージョン番号:バージョン数などの版数を示すもの。music_battle_theme_epic_v3_finalMix_02 ではゴチャゴチャしており、本当に「最後」のファイナル「最終版」であるのか疑問が残ります。
- チーム間で用語が統一されていない:オーディオファイルがmechanic_woodboxと命名されているのに、アーティストたちがmechanic_crateと呼んでいる状況など。このような不一致は混乱を招きかねないため、部署間で用語を統一します。
- 空白は避けるように:一般的に単語と単語の間にスペースを入れない方がよいでしょう。ツールやユーティリティによっては問題が生じることがあり、基本的に推奨されません。
まとめ
命名規則に普遍的なルールはなく、プロジェクトごとにニーズが異なります。ただし早い段階で各部門の意見を聞き取りながら考え抜かれたシステムを設定することにより、制作の効率化を図ることができます。また命名規則を文書化することで、全員が同じ見解を共有することができます。
これらのヒントがあなたのアセット命名の役に立ち、ワークフローの最適化に繋がることを願っています。どうぞ命名を楽しんでください!
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