『Moss』シリーズ第2弾となる『Moss: Book II』はVRプラットフォーム専用に設計されたアクションアドベンチャー系パズルゲームです。プレイヤーが若きネズミのヒーローQuillと組み、Mossの世界を救おうとするゲームですが、サードパーソンとファーストパーソンのどちらのゲームプレイも取り入れています。プレイヤーはアクションアドベンチャーにお馴染みのコントロール機能を駆使して、コンバットとプラットフォーミングの場面でQuillを動かしますが、時としてQuillの友人であり大事な味方であるReaderの役になることもあります。Reader役の時、プレイヤーはワールドの中に物理的に手を差し入れることができ、プレイ空間内の物とやり取りをしながらパズルを解いたり、闘いを助けたり、Quillが行きたい方向にすすめるように手助けしたりします。
プレイヤーはQuillに手を差し伸べて彼女と直接やり取りをすることもできます。Quillとハイタッチをしたり、なでてあげたり、彼女が闘いで優位に立つことができるように武器をチャージしてあげたりすることも可能です。ゲームを通じてQuillとの絆を築き上げていくことが、ゲームの魅力のうちの1つとなっています。
Polyarc社の『Moss II』担当オーディオチームは社内メンバー3人とパートタイムの業務委託の2人です。オーディオディレクターはKristen Quinn(旧姓Quebe)、シニアサウンドデザイナーはSun Kim、ボイスディレクター兼オーディオエンジニアはStephen Hoddeです。
業務委託のサウンドデザイナーはKyle Vande Slunt、Elise Katesの2人です。
インタラクティブデバイス
VRのためのオーディオの仕事をすることの楽しみの1つは、自分でゲームワールドに向かって手を伸ばし、物理的な空間のさまざまな種類のデバイスに手で触れ、操作できることです。今日詳しくご紹介したいのは「振り子」と「水車」です。そして最初の『Moss』ゲームでどのようにデバイスをセットアップして、今の『Book II』ではどのようにしているのかもお見せしたいと思います。Stephenがカスタムコンポーネントを構築してくれたおかげで、よく使用するイベントへのアクセスや、デバイスをビルドする時に必要となるデータへのアクセスが可能となりました。
振り子
振り子の設定方法は『Moss 1』でデバイスを設定した方法と同じです。すべてがブループリントで駆動するロジックです。振り子は天井の1点から吊り下げられています。青色の球体がプレイヤーのコントローラ、またはReaderの手となります。プレイヤーは手を差し出して振り子をつかみ、弧に沿って振り子を動かします。振り子が充分に近くまで来た時、Quillはプラットフォームに飛び乗り、Quillの重みでプラットフォームの位置が動くこともあります。プレイヤーが手を放すと振り子が前後に揺れ、動きがゆっくりとなり徐々に静止点で落ち着きます。Readerとしてプレイヤーは振り子が最大限の高さまで来た時にリリースすることもできれば、弧の谷間で放すこともでき、デバイスの反応が変わります。プレイヤーはいつでも自由に振り子をつかみ、動きを中断させることもできます。
振り子は3つの異なる場所から音を出します。天井側の支点、下のプラットフォーム、プラットフォーム真上の接続位置です。プラットフォームレベルでは、以下のコンテンツがブレンドコンテナで再生されます。
Swing Tension(振り子の張力) - デバイスが動く時にデバイスにかかる金属の応力と圧力。これは中間の周波と低周波のループに分けられていて、別々に調整できます
Foliage(葉) - プラットフォームに付いている植物の音
Wind(風) - プラットフォームが空間内を移動する時に発せられる、空気の動きを表す低音の共鳴音
デバイスは感触が肝心です。動的に反応するように、プラットフォームの速度と振り子の現時点の角度の両方を計算する必要があります。プラットフォームの中央から計算するため、それが移動した距離をそこまで移動するためにかかった時間で割ります。これをWwiseにRTPCとして送ります。
ブループリントで角度を計算すると、このようになります。
速度が最高の時や天井近くのトップ部分から最も極端な角度の時に再生される、金属のきしむエレメントがあります。このため弧上で最も遠い点で張力がより高く感じられる瞬間が出てきます。0 = 最も左または最も右の角度、1 = 中央。
プレイヤーがデバイスをどのように扱うのか、あらゆる可能性を検討する必要がありました。振り子をつかむ、放す、ただそのまま持っているなどの動きに対応した音があります。
最終的にゲームで振り子がどのような音になったのか、こちらの例をご覧ください:
水車
山中レベルの1つに、私たちが水車と呼ぶインタラクティブな大型の装置があります。水車をつなぎとめているロープが切れてしまうと下の方へ回転してゆき、最後に凍った池の中へと墜落します。この時点で水車はプレイヤーが回転することのできる、水に浮く金属製の単なる車輪です。
『Moss II』ではデバイスの実装をシンプルにして、私たちがよく使うイベントやデータへのアクセスを可能にしたいと考えました。これを達成するためにStephenが専用のオーディオデバイスコンポーネントを作成し、どのデバイスにも追加できるようになりました。このコンポーネントが私たちにいくつかのイベントやよく使うRTPCを提供してくれました。スレッショルドを利用してループのスタート地点やストップ地点を制御しています。この新しいコンポーネントを最初に利用したのが水車でした。
以下のイベントにアクセスできるようになりました:
Interaction Enabled(インタラクション有効)– 手でデバイスを操作することができるようになり、この時点からデバイスをつかむことができます
Interaction Disabled(インタラクション無効)– 手でデバイスを操作することができなくなり、これはデバイスをつかんでいる手を引く時などです
Touch Begin(タッチ開始)– あなたの心の手をインタラクションボリュームに入れます(まだつかんでいません)
Touch End(タッチ終了)– あなたの心の手をインタラクションボリュームから離します
Device Grab Press(デバイスつかみを押す)– 手でデバイスをつかみます
Device Grab Release(デバイスつかみを解除)– デバイスから手を離します
Idle Loop Start Event(アイドリングループ開始イベント)– 再生開始時にトリガーされます
Idle Stop Loop(アイドリング停止ループ)- 再生停止時にトリガーされます
Speed Loops Start(スピードループ開始)– RTPCスレッショルドを超過した時に再生を開始します
Speed Loops Stop(スピードループ停止)- RTPCスレッショルド未満になった時に再生を停止します
このデバイスではアイドリング開始だけを使用しましたが、それはこのデバイスが回っている時だけでなく、水に浮いて動きがない時にもコンテンツを再生したかったためです。アイドリングと回転中のそれぞれのコンテンツの間のクロスフェードを制御するために、私たちはデバイススピードを利用しました。
水車がアイドリング状態の時は、水車に水が波打つアイドリングのループがあります。さらに水車が時おりランダムに氷にぶつかる音として、空洞の金属の1 shot(一発音)があります。
プレイヤーが水車を回すと金属をつかみ負荷を与える別のループがあり、ほかにもデバイスが回転する時の追加音もあります。
Metal Scrape(金属をこする)- 大型の金属をこする、または氷の上を引きずる音
Underwater Loop(水中ループ)- 水車が水面で回転する時に吸引力で水面下の水を引き込む音の、ハイドロフォンによる収録
Water - 1shot(水-1ショット)- 水をかく拌させるループに重ねて、変化のあるエクスペリエンスをつくる水の跳ねる音
Turn Water Loop(水回転ループ)- 水を継続的にかく拌する音
デバイスコンポーネントが必要なデータを出力し、必要なイベントへのアクセスを提供してくれたため、ブループリント内でとても簡単に設定することができました。
水車がゲーム内でどのような音になったのかを、こちらの例で見てください:
最後に
このゲームではデバイスがとても重要な役割を果たします。信ぴょう性のあるデバイスを実現できたのは、デバイスの動作やゲーム中のプレイヤーのアクションに基づいてコンテンツを変化させる動的なオーディオシステムを、巧みに構築することができたからです。専用デバイスコンポーネントを作成して実装に費やす時間を短縮させることで、コンテンツに注力する時間を増やせました。おかげでシステムの微調整により多くの時間をかけることができました。これでプレイヤーがゲームワールドに手を伸ばしてデバイスを操作し、アナログ感あふれる楽しい時間を過ごせることを願っています。『Moss: Book II』の開発は私たちにとってすばらしい経験であり、ここでみなさんにご紹介できたことが非常に嬉しいです。私たちとこの旅に参加してくれて、ありがとうございます。
コメント
Jiang Shan
July 21, 2023 at 03:58 am
音楽はとても素敵です~~~よくやった
Jiang Johnson
July 21, 2023 at 03:59 am
音楽はとても素敵です~~~よくやった