小さなロボットの物語: COZMOに生命を吹き込んだWwiseのインタラクティブオーディオ

インタラクティブオーディオ

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「なんでロボットにオーディオが必要なの?」とよく聞かれますが、実は私も数年前にAnkiに来た当時、同じ疑問を持ちました。Ankiはロボット工学とAIを専門とする150人ほどの、急成長中の米サンフランシスコの会社です。これまで私達は技術を応用して、スマートフォンで操作できる物理的なおもちゃ(DRIVEOVERDRIVEなど)を開発しました。COZMOはさらにその一歩先を行く最新プロジェクトで、ロボット工学とAIを駆使してロボットに生命を吹き込み、Pixarのウォーリー(Wall-E)風のキャラが生まれました。このプロジェクトも、まだほんの序章にすぎません。

 

現実的にはロボット、特に消費者向けに大量生産でき、大金をかけなくても買えるようなものを生産するのは、非常に難しいことです。私も徐々に分かったことですが、いわゆる消費者向けのロボットの大半は、実は遠距離操作できるシンプルなおもちゃのドローンのようなもので、主体性も意図もなく機能があまりにも制限されているため、真のロボットと呼べません。本物のロボットはAI、パスファインディング(経路探索)、メモリマッピング、コンピュータビジョン、そして周囲の環境を操作する能力など、様々な機能を備えるべきです。私は決してロボット技術者ではないので、これはAnkiの素人としての意見です。Ankiは消費者向けの本物のロボットの開発を目指しているだけでなく、子どもが気軽に一つ(またはそれ以上)持てるようなゲーム機程度の価格帯まで値段を下げて、SDKも提供しようとしているのです。

 

Ankiで初日にCOZMOの計画を見た瞬間、オーディオに対する仲間の期待度が身に染みて分かりました。COZMOと接するユーザーのエクスペリエンスをオーディオでどう強化するのかは具体的に浮かんでいなかったようですが、きっとできるということだけは、みんなが確信していました。Ankiでは、ロボットを生き生きとしたキャラクターにして、機械面のコストを抑えるためにも、インタラクティブオーディオをうまく利用してCOZMOの性格やかわいらしさを表現し、ユーザーが飽きず、情報を得ながら、面白いと感じるようにしたいと考えていました。私達がつくり出すコンテンツは、映画やゲームで見る最高品質のものと傾向が非常によく似ています。COZMOには表現力のある個性的な声と独自の言語が与えられ、彼の冒険をお供するためのカスタム設定されたサウンドトラックも付く予定です。そして、これを全て可能にしているのが、Wwiseなのです。

 

 

Ankiに入った私の最初の決断の1つが、オーディオミドルウェアプラットフォームにWwiseを採用することでした。多少の苦労もありましたが、最終的には結果を早く出すために既存のツールを利用することが大事だとチーム全員が理解してくれました。Wwiseを使い始めたことで、COZMOと話すアプリを稼働させるスマート端末に、オーディオを素早く載せることができました。さらに、Wwiseのソースコードにアクセスできるので、COZMOに搭載されたスピーカーと話すカスタムプラグインを開発できたほか、確実なサンプルアキュレート性を実現して、オーディオバッファを効率的に管理することができました。今では、色々な意味でWwiseがAnkiの「共通オーディオ言語」となっています。Wwiseがあるからこそ、オーディオの専門家でない人にも、オーディオのノンリニアのコンセプトや動作を分かりやすく説明できます。もちろんカスタム化された独自ワークフローやパイプラインも幅広く取り入れていますが、Wwiseのおかげで早い段階からコンテンツの完成度を上げることに集中できツール開発に割く時間を減らせました。

ブライアン・ミン(BRIAN MIN)

オーディオディレクター

Anki

ブライアン・ミン(BRIAN MIN)

オーディオディレクター

Anki

ブライアン・ミンは米サンフランシスコのロボット工学・AI会社であるAnki Inc.のオーディオディレクターです。これまでに、数々の受賞作品を発表してきたインディー系ゲーム開発会社Double Fineのスタジオオーディオディレクターや、ソニー・コンピュータエンタテインメントのシニアサウンドデザイナーなどを務めました。

 @sonicrevo

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