ゲームのサウンドデザインに求められるスキル 100件の求人情報を分析して
ゲーム会社が、サウンドデザイナーやコンポーザーを採用するときに求めているのは何か?言うまでもなく、抜群の聴力や、今どきのレコーディング技術を使いこなせること、DAWを難なく扱えること、などが重要です。でも、従来のサウンドデザインや作曲の専門知識に加え、 具体的に必要とされるスキルやソフトウェアは?あなたの履歴書に一体どんなスキルがあれば、面接や採用の候補者リストに残れるのか?
この疑問に答えるべく、私たちは2020年4月から7月までの4か月間、100件近くのゲームオーディオ関連の求人情報を分析し、職務内容を詳しく検証しました。必須条件や歓迎されるスキルなどをまとめて、集計しました。
調査対象は給与制の正社員の募集要綱で、フリーランスのコンポーザーや、委託業務のサウンドデザイナーなど、フリーランス契約は含まれていません。フリーランスの業務は、 ゲームオーディオの仕事の半分 にあたります。また、今回の分析目的を考慮し、ゲームオーディオ関連であってもコンピュータープログラミングがメインの仕事は除外したので、「オーディオプログラマー」のようなオーディオコンテンツの制作に携わらない職種は、入れていません。
大体どの求人案件でも、DAW、オーディオ制作ツール、レコーディング技術といった、標準的なサウンドデザインのスキルが求められています。そこで、レコーディングやミキシングなどのスキルは集計から除外しました。ただし、ProToolsとReaperに関しては、ほかのDAWよりも明らかに求められる頻度が高いので、その掲載回数を記録しました。
一般的な職種名
ゲームオーディオ職に、決まった呼び名はありません。一番多かった求人は「サウンドデザイナー・ゲームオーディオデザイナー」職で、「アシスタント(Jr.)」サウンドデザイナーから「エキスパート」サウンドデザイナーに至るまで、すべてを含みます。下表は、分析した求人情報の職種名や、職種名に含まれる単語(Job Title Includes Phrase)、全体に対する割合(Percentage)、そしてその他の情報(Notes)を示したものです。
スキルの分析結果
私たちが分析した求人情報の中で頻出の用語を、以下にまとめました。求人を1つ1つスキャンして、下記の用語、または類似する用語が含まれるかを確認しました。スキャンの対象となったのは求人情報の全文で、応募資格の「必須条件」と「歓迎条件」、そして仕事の概要や業務内容なども含まれます。最初に書いたとおりサウンドデザインの基本的な技術は集計の対象でないので、「DAW」や「プロフェッショナル向けオーディオツール」などはカウントせず、ゲームオーディオデザインの特殊スキルに絞ってあります。
「経験」 69%
予想通り、最もよく見られた募集要件は「経験」でした。会社側は、すぐに仕事ができる人を探していて、ゲームプロジェクトの仕事の進め方に慣れた人を求めています。ここで注目してほしいのは、求人の10件中7件は「経験」を応募資格と記載しているのですが、具体的に「AAA」に言及するのはそのうちの半分ほど、全体の36%に過ぎないということです。(「AAA」または「トリプルA」とは、例えば『レッド・デッド・リデンプション』や『GTA』など、開発予算が大きくて数年越しのゲームを指す業界用語です。)
なかには「経験」の代わりに「学歴」を認めることを示唆する求人もありましたが、AAAの経験が求められている場合は、そうではありませんでした(後述の Formal Education(学歴) を参照。)
「Wwise」 63%
ゲームオーディオの求人の10件中6件以上が、応募の資格や歓迎条件として具体的に「Wwise」を挙げています。Wwiseはゲームオーディオ業界の特殊なソフトで、DAWで作成したサウンドファイルやミュージックファイルを、インタラクティブな形にして実際のゲームにインテグレートできるようにします。Wwiseはサウンドデザイナーやコンポーザー向けに無償提供されていて、 www.audiokinetic.com からダウンロードできます。
ほかにも、応募資格としてスクリプト、Unreal、学歴、ProTools、Reaper、FMOD、作曲、Unityなどが出てくる割合や、採用企業の規模によって応募の際に気を付けることについても、この記事の GameSoundCon掲載の完全版 に紹介されています。
コメント