みなさん、こんにちは! Audiokineticライセンス担当のマイクです。今回こちらのブログで私が 4月に公開した動画 のフォローをしたいと思います。2022年4月1日にサプライズで発表した新しい無償インディーライセンスは、なんとアセットの制限がありません(エイプリルフールのジョークではないです)!詳しい話をする前に、これまでの経緯を説明したいと思います。
インディー向けWwiseの簡単な歴史
1. 大昔の話(真夜中)
Audiokineticの設立当初(私がチームの一員になるはるか前のこと)は、小規模なチーム向けのライセンシングモデルが存在しませんでした。当時は立ち上げたばかりのスタートアップ企業として、購入していただけるクライアントを獲得して自分たちの経費を払えるようにすることが第一でした。そしてそれは上手くいきました。その頃からすばらしい開発チームたちと一緒に仕事をし、かなりクールな初期のゲームができあがりましたが、AAAだけに目を向けていました。当時もWwiseを無料でダウンロードしてオーサリング機能を使用したりサウンドバンクを構築したりできましたが、いざ商用ゲームの開発をはじめるとなると、結構な額のライセンシング料が発生しました。そこで新たにティア型ライセンスモデルを設け、より多くのチームが人数や予算にかかわらずWwiseを気軽に利用できるようにしましたが、それでも本当に小規模チームの小さなゲームは取り残されたままでした。
2. 暗黒時代(夜明け前)
Audiokineticのビジネスの足腰がしっかりしてきて、転んだ時でもさらに強くなって立ち上がれるようになるにつれわかってきたのが、実に多くの小規模チームがWwiseを使おうとしていることでした。Wwiseを学校で習った人、前職の大企業でゲーム開発に使用して今は小さいチームに所属している人、プレイした最高のゲームにWwiseのロゴが表示されていたので同じツールを使用してみたい人など、理由はいろいろでした。評価用で試用したとしても、新しく導入されたティア型ライセンシングモデルの低予算向けレベルAライセンスでさえ手が届かなかったのです。予算のない小さなインディーゲームを開発しているような人たちにとっては、プラットフォーム1つのライセンス料が750ドルと言われても、100万ドルと言われても、手が出せないのは同じことなのです。そこで限定商用ライセンスの最初のバージョンを導入し、ライセンスなしのWwise版と同じような技術制限で商用ゲームをリリースできるようにしました。音やアセットの数は200個に制限されますが、多くのチームにとって当時はそれで問題はなく、無料試用こそ求めていたものでした。するとWwiseを試しに使いはじめエンジンで小さいゲームを作るチームが急増しました。しかしまだ充分ではありませんでした。
3. 暗闇から一歩踏み出して(夜明け)
私たちはこの時点で「サウンドやアセットの数が基本の200では足りない」というフィードバックを多くのチームから受けていたため、そろそろ変えないといけないと感じていました。しかし無料ライセンスを設定してチェックシステムが存在しないとWwiseは無料だと思い込んでしまうチームが増えてライセンスが必要となった段階で驚くかもしれません。そこで完全に無料のライセンスを設ける代わりに少しだけ変更して限定商用ライセンスのサウンド上限を500に増やしました。これについては小スタジオにはWwiseを無料であげようと主張するメンバーもいれば、一定の制限を設けようと主張する人もいたり、社内でかなり議論が行われました。誰もが迷わず避けたかったのは、ライセンスタイプによってWwiseの基本機能の提供を制限することでした。チームの大小、目標、財源に関わらず、すべての基本ツールを使えるようにするべきだと私たちは信じています。2人組のチームがとても強烈なゲームにWwiseのスペーシャルオーディオシステムを利用してかっこいい音の伝播を実現するかもしれないし、インタラクティブミュージック機能を活用して高度なミュージックシステムのシンプルなゲームをつくるかもしれません。サウンドやアセットの数を500に制限しても解決できない問題がいくつかあり、前よりも複雑なライセンシングモデルになったと感じるユーザも出てきました:
a. ライセンスなしでWwiseを使うと最大200個のサウンドやアセットの非商用プロジェクトを構築できます。
b. 非商用ライセンスでサウンドやアセット数の制限なしで非商用プロジェクトを構築できます。
c. 商用試用ライセンスでサウンドやアセット数の制限なしで商用プロトタイプを構築できます。
d. 商用ライセンス(予算に応じて3段階のティア)でゲームを購入済みプラットフォーム向けにリリースできます。
e. 限定商用ライセンスやスターターライセンスでは、開発予算が150,000米ドル未満である場合に限り、最大500個のサウンドやアセットの商用ゲームを作成できます。
併せて、プレミアムプラグインのルールやロイヤリティーベースモデルなども出てくると、いっそ満月の夜の登録割引だとか土星の逆行の時の真夜中の特典があってもおかしくありません。多くの人がライセンシングタイプを理解していませんでした(私たちにとっては実に明快な価格設定ですが)。
限定商用ライセンスのもう1つの大きな欠点は、毎年の更新制のため実際にゲームがリリースされたのかどうかが分からないことが多かったことです。
4. そしてついに・・・陽の光がみえた!
社内で白熱した議論を重ね、データ解析を専門とする同僚の分析結果(単純な数値や主観だけではなく)を元にみんなで合意したのは、限定商用ライセンスやスターターライセンスを廃止するだけではなく、古いレベルAライセンスも廃止するということでした。ライセンスの種類が多すぎて混乱を招き、予算がないのにアセット数を増やしたいチームにとってのハードルが高いわりには、そのようなプロジェクトから一般的に見込める売上高は比較的少ないため、私たちはその売上高を手放したとしても利用者の増加と制度の簡素化で全体的なバランスが取れると考えました。その後いくつかの条件を設定し今日に至ります。それでは新しいインディーライセンスの詳細と、使用手順や利用上のガイドラインを次で説明したいと思います。
歴史についてはここまで。次は現状について。
まずインディーライセンスの対象者ですが、ゲームの開発バジェットが250,000米ドル未満のチーム(一部アプリ開発も応相談)が該当します。大変多くの小規模インディーデベロッパ(独立開発者)がこの予算内で仕事をしているため、無料ライセンスの上限として適切だと判断しました(何百万ドルもの予算がある「III(トリプルアイ)」級インディペンデントスタジオは対象外)。予算のない状態でゲームのプロトタイプフェーズをすすめていたとしても、制作に入る前に高額の資金調達を目指している場合は、目標予算を目安に通常商用ライセンスの試用版でスタートさせてください。
またWwiseライセンスのアセット制限ライセンスがなくなりました(以前のライセンスキーが継続されるレガシータイトルを除く)。Wwise試用版、非商用ライセンス、インディーライセンス、完全有料ライセンス共にサウンドやアセットの数に制限はありません。Wwiseのライセンスなし(登録されたプロジェクトもライセンスキーもない)バージョンだけは今後もサウンドやアセットに200個の上限がつきます。
では、はじめてみましょう。最初に押すのは文字通り「はじめてみよう(Get Started)」ボタンです(その前にAudiokineticウェブサイトのアカウントが必要ですが、Wwiseをダウンロードする前に取得しているかと思います)。さっそくウェブサイトを開いて右上の大きな青い「はじめてみよう」 ボタンをクリックしてください。プルダウンメニューに「プロジェクトを登録する(Register My Project)」と表示されます。これをクリックします。
次はプロジェクトの趣旨についての簡単な質問です。
- 「商用(Commercial)」 - ほとんどのプロジェクトが商用目的(収益に結び付けたい場合)となります。F2P(プレイ無料ゲーム)でもマイクロトランザクションや広告収入がある場合や、マーケティング目的のプロジェクト(製品を宣伝するものであればゲームやアプリが無料でも)は商用です。また前述の通り、資金調達に成功した際には商用となるプロトタイプを作成するのも最初から商用とした方がよいかもしれません。無料インディーライセンスを狙っているインディー開発者のみなさんもここをクリックしてください。
- 「非商用(Non-Commercial)」 - 学習用(これは将来的に切り分けるかもしれません)、完全無料ゲーム(収益化なし)、無料の展示、その他の非営利目的プロジェクトが該当します。
- 「学校/教育機関(School / Academic)」 - 学校のコースページまたは学校管理者向けのコース作成ページにリダイレクトされます。今回は関係ありません。
- 「プラグイン(Plug-in)」 - Wwiseのプラグインを開発して配布する場合はこれに該当します。自分のプロジェクトで使用する独自開発のカスタムプラグインは登録不要ですが、広く配布したい場合(無料・有料に関わらず)はここで登録する必要があります。
「商用(Commercial)」をクリックすると次のオプションが表示されます。あなたの業界を教えてください。
デフォルトは「ゲーム(Gaming)」ですが、みなさんの95%はこれに該当するかと思います。ほかにもロケーションベースエンターテイメント、オートモーティブ、広告、映画制作(リニアなオーディオ)、カジノ(必然的に特殊なライセンシングとなります)、ロボット工学(特にWwiseをロボットに組み込む場合)、シミュレーション(ここでは「PC向けレーシングシミュレーションゲーム制作」ではなく、「ボーイング社の技術者として次世代シミュレータにWwiseを利用したい」場合です)の選択肢があります。ここで「ゲーム」を選択したと仮定します。「次(Next)」をクリックしてください。
今度はあなたのプロジェクトについて教えてください。主に次のようなことです:
1. プロジェクトのコードネームなど(正式名称でも可)。私たちが使用でき、且つあなたが忘れない名称にしてください。
2. 公式ウェブサイトがあれば入力してください。
3. あなたがこれまでに別のプロジェクトに関わったことがある場合、会社名のプルダウンメニューが表示され、あなたが参加したことのあるプロジェクトの関連会社を選択できます。プライバシー保護のためにAudiokineticの顧客リストをそのまま載せることはできず、オートコンプリートもありません。ただしあなたのアカウントがほかのプロジェクトに含まれていたことがあれば、ここでその時の会社を選択できるようにしても安全上の問題はありません。これで登録の手順を1つ省略できます。もしはじめてのプロジェクトであれば、会社のプルダウンメニューは表示されません。
4. すでにAudiokineticのライセンシングチーム担当者と連絡を取っている場合は「Audiokinetic連絡先」リストから選んでください。私のチームと話をされているようであれば、あなたのプロジェクトに別の担当者を付けないようにします。
5. 「プロジェクト詳細」は必須フィールドですが、中には「ゲームです」と曖昧に書く人もいれば、ゲームの世界観を語る重いファイルやデザインドキュメントをそのままペーストする人もいます。ここでは「海底が舞台のトップダウンRPG」といった一般的な説明を記載してください。
6. プリプロダクション終了予定日: 難しい言い方をしていますが、基本的にプロトタイプ期間の終了日または制作開始の承認予定日のことです。インディーチームにとっては資金源やパブリッシャが見つかるかどうかで、前進するか撤退するかを判断する日かもしれません。だいたいこの日付に基づいてあなたのライセンスキーの最初の有効期限を設定しますが、後から変更できます。
7. リリース予定日: ほとんどのゲームでリリース予定は当てずっぽうになります。特にインディーゲームでは希望日をとりあえず入れていおいて、おそらくかなり高い確率でほぼ確実に後から変更するだろうと考えてよいと思います(プロジェクトが承認されないかもしれませんので、ふざけて「3000年にリリース予定!」とは書かないでくださいね!)。私たちはプロトタイプ期間とリリース日を比べてチェックし、不明な点や不備がある場合は、確認のために後日連絡をします(例えばプロトタイプ期間が24か月で制作期間が2か月であれば、疑問に思うかもしれませんし、特定の状況下では納得できるかもしれません)。
8. 制作予算: これはインディーライセンスの説明なので予算をなし、または少額とするか「25万米ドル未満」とします。それより高額な値を入力すると通常の試用ライセンスになります。
9. ゲームエンジン: 何で作業されているのかを教えていただけると私たちも助かります。UnityまたはUnrealを使用されている場合はそのバージョンとWwiseのバージョンを、それ以外のエンジンやカスタムエンジンを使用されている場合はWwiseのバージョンをお聞きします。
10. 続いてターゲットプラットフォームを教えてください。ここでは「このプロジェクトをゆくゆく提供していきたい全プラットフォーム」ではなく「今何を開発中なのか」です。プラットフォームの追加はいつでも可能で、コンソールには別途バリデーションが必要なため(まだお持ちでないかもしれません)、ここでは過剰に記載をする必要はありません。
項目がたくさんありますが、きっとインディースタジオとしてすでに考えてあると思います。「次(Next)」をクリックしてください。
さて前のページで会社の候補一覧が表示されなかった場合は、Audiokineticのシステムに登録しますのであなたの企業情報を入力してください。会社名、ウェブサイト、規模、住所などの簡単な内容です。ここで会社の規模を50人以上とし、前ページの予算に25万ドル未満を選択していた場合は疑問が出てくるかもしれません。すべて入力したら「次(Next)」をクリックします。
契約関連のセクションが最後の入力項目です。すべてのプロジェクトは利用規約に従う必要があります。ここでクリックしてライセンス契約を確認または保存して「同意します」と表明するか、「自分は署名できないけれども権限のある人に送って欲しい」と指定するか(その方にプロジェクトへのインビテーションが送信され署名権限が付与されます)、「今すぐは署名できません」としてください。契約の署名を保留した場合は契約が承認されるまでゲームをリリースできないため、スキップしておかないようにしましょう。契約が承認されるまではプロジェクトが承認されない可能性が高いです。
ロイヤリティベースのライセンスを選択するのもこの場所ですが、インディーライセンスカテゴリのプロジェクトの場合は不要です(予算が後日増えてロイヤリティに切り替えたい場合は変更可能です)。
最後はサマリーページです。入力内容を確認して修正したい場合は「戻る(Back)」を押します。問題がなければ「私の知っている限りこれは真実です」という意味のチェックボックスをチェックします。これはフェイクのプロジェクト申請を阻止するためのものです。
「送信(Submit)」をクリックするとプロジェクトが承認待ちとなります。入力内容に問題がなくライセンス契約の確認が済んでいる場合は、Audiokinetic担当者によって1~2営業日で承認されるはずです。
次はどうなるのか?
インディーライセンスの場合、プロジェクトの承認後に「Purchased(購入済み)」と表示されたライセンスキーが提供されますが、有効日がプリプロダクション終了予定日頃となっています。これはAudiokineticがその時点であなたがライセンスの予算要件をまだ満たしているかどうかを確認できるようにするためです。満たしている場合は、リリース予定日の直前まで有効な新しいライセンスキーが提供されます。一方開発予算が増えて制限を超過した場合は、あなたと別のライセンシングの選択肢を検討します。その後リリース予定日にもう一度、予算が制限内に収まっているかどうかを確認します。その時点でも予算制限内であれば1年間ほど有効な最終キーが提供されますので、ゲームをリリースし、追加コンテンツなどの仕事をすすめることができます。同じく予算が超過している場合はあなたの開発予算やゲームの状況に合ったライセンスを一緒に検討します。続いてリリースから1年後にもう一度ご連絡しますので、まだそのゲーム用にコンテンツを作成してサウンドバンク構築を希望するか、ゲームや追加コンテンツの成功によって予算が増えていないかをお伺いします。これらをもとに、さらに1年延長をするか、予算が制限を超えたため有料ライセンスにアップグレードするか、またはゲームの作業が終わったためそのままキーを失効させるかを判断します。
いろいろと複雑な確認事項があるように思えるかもしれませんが、エンジンを誰が何に利用しているのかを把握するための重要な情報であり、あなたが技術を使用するにあたり法的な条件をクリアできているのかをご自身で確認できますし、無償でWwiseにアクセスできることを考えると、全体的にタイムパフォーマンスはよいと思います。
以上です。ライセンシングモデルに関するご質問は遠慮なく licensing@audiokinetic.com までお問い合わせください。担当者が決まっている場合(特にプロジェクトを登録して承認された後)、プロジェクトページに「あなたのAudiokinetic担当者に連絡する(Contact your Audiokinetic Representative)」ボタンがありますので、サポート以外の質問にご利用ください。
インディー向けのシンプルで分かりやすいライセンスモデルがようやく実現できたことをとても嬉しく思い、今後もみなさんのご意見を聞きながら必要に応じて適宜対応していきたいと思います。
それではまた。次回はインディー以外のみなさんにも向けて発信する予定です!
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