2017年に最もバズったビデオゲームの1つ、Halo Wars 2を、英紙ガーディアンは、リアルタイムストラテジーゲームのエキサイティングな再到来と表現し、同じく英国の専門誌兼サイトPC Advisorは、RTSを見事にコンソールジャンルに持ち込み、シリーズのファンも満足するだろうと評しています。約10年前に初代Halo Warsをリリースしたマイクロソフトが、シリーズに新たな展開を組み込み、Blitzなど複数のマルチプレイヤーモードを立て続けに導入しました。同社は、見事にゲームに新たな息吹を吹き込んだだけでなく、新しいサウンドも試してみようと、コンポーザーのブライアン・リー・ホワイト(Brian Lee White)氏とブライアン・トリフォン(Brian Trifon)氏(両氏ともFinishing Move)、そしてゴーディー・ハーブ(Gordy Haab)氏に声をかけました。
ハーブ氏はStar Wars: Battlefrontのスコアや、トリフォン氏とホワイト氏の新作Massive ChaliceやThe Master Chief Collectionなどのスコアを完成させ、そのまますぐ2015年春に、Halo Wars 2の世界に突入しました。革新的で、個性的なおもしろいサウンドを通して自分達の色を残したいと考えた彼らは、確実にそれを成し遂げました。3人に、このゲームのサウンドトラックについて聞きました。
Halo Wars 2のスコアを計画するにあたり、あなたたちの任務は、先行するゲームのスタイルをさらに発展させることでしたか、それともオリジナルの曲を求められましたか?
トリフォン氏(以下BT): 求められたのは、単独で成立する完全にオリジナルな曲でしたが、Haloという音楽の世界観にも合わせる必要がありました。幸運にも、Haloの今までの音楽の流れを見ると、生粋のオーケストラやコーラスピースから、完全にエレクトロニックなテキスチャーで構成された曲まで、実に広範囲に及び、さらにロックギターの速弾きまで入っています!
Halo Wars 2で期待される音楽とは?
BT: Halo Wars 2の音楽は、洗練されたオーケストラミュージックを、固有のテキスチャーミュージックやアンビエントミュージックとブレンドさせています。色々な意味で、伝統と未来の融合です。
ゴーディー・ハーブ氏(以下GH): 同時に私たちは、かなりシネマティックな観点からスコアに取り組みました。だからHalo Wars 2のキャラクターはみんな、テーマや音楽が決まっていて、それぞれの個人的な気持ちの盛り上がりが伴奏となっています。私たちは、与えられたミッションを達成できたと思うのですが、それが真実ならば、大変ドラマチックで感情に訴えるストーリーが音楽を通して聞こえてくるはずです。
ゴーディーに質問。Star Wars: Battlefrontで学んだことを、Halo Wars 2で使いましたか?
GH: もちろん!おそらく一番経験になったのが、自分のクリエイティブな気持ちを保ちつつ、一方では非常に高い品質を求めてくるスタジオが、今回のような人気シリーズでさらに期待度を高め、他方では既存のファンベースの、これまた極めて厳しい評価を意識し、二重のプレッシャーに同時に耐えることだったと思います。この難しい状況に直面したのは、Star WarsもHaloも同じでした。幸い、プレッシャーを管理できるように鍛えられました。もう1つ、Star Wars Battlefrontや、私が関与したほかのStar Warsタイトルから学んだのは、元の素材に敬意を表しつつも、自分を大事にしてユニークな音を提案することの大切さです。
もしHalo Wars 3の話があれば、もう一度作曲したいと思いますか?音は、どう変化していくと思いますか?
BT: 絶対に!Halo Warsの仕事は、もっとやってみたい。ストーリーの変化や、どのような劇的な展開があるかによって、音も変化すると思います。
GH: 迷いなく、やりたい。このプロジェクトは、みんな楽しんでいました。これでHaloワールドに音楽的な印を残せたので、自分達が貢献した内容をこれからも成長させたい、と3人とも思っているのでは。
2人のブライアンに聞くけれど、あなたたちの会社Finishing Moveの名で、ほかのHaloプロジェクトにも、何度かクレジット表記されていますね。今回、ゲームのサウンドトラック制作をフルに任され、今までの経験は役に立ちましたか?
ブライアン・リー・ホワイト氏(以下BLW): 以前にシリーズに関与したときに、“Halo Music”とは何ぞや、というバックグランドを詳しく把握できたばかりでなく、ファンの気持ちや期待度を深く理解することができました。Halo Wars 2では、少し気を楽にしてアイコン的なシリーズの内にも自分たちの声を見出したいと思いつつ、Haloミュージックの神髄に迫り、ファンを裏切らないようにしたいと考えました。その意味で良いバランスを保てたと思うし、以前にシリーズに関わった経験が、大いに役に立ちました。
過去15年の間にビデオゲーム業界は大きく変化し、ビデオゲームミュージック業界は、さらに変化のペースが早かったと思われます。これから15年の動きを、どう予想していますか?
BLW: VRのおかげで、ゲーム開発者にもコンポーザーにも、全く新しい可能性に富んだ世界が開けてきたけれど、ゲームオーディオの分野では、今までにない新課題が沢山出ていて、特に音楽的には複雑だと思います。私は、まだVRエクスペリエンスの中で「これだ」と思うベストな音楽の使い方を経験していないと思うし、まだ始まったばかりなので、これからどうなるかがとても楽しみです。
GH: 業界の今後の行方は、この分野の関係者のイマジネーション次第だと思います。ゲーム関係者の中には、実にイマジネーションに富んだ人がいます!だから、無限の可能性があります。実は、2人のブライアンと私は、Ankiがつくった“Cozmo”というロボット用に作曲するという、珍しい機会に恵まれました。Cozmoは学習して自分の性格や気持ちを順応させることができるので、常に変化し続けるCozmoの気持ちを曲で表現するチャンスだったのです。私が、これからの音楽媒体の方向性について15年前に聞かれていたら、ロボットの作曲をするだろう、なんてきっと想像もできなかったはずです。だから、次に何があるか誰にもわかりません!
ゲームのトーンを決めようとしていたとき、3人でストーリーボードなどを見ていたのですか?
BLW: 恵まれたことに、作曲開始の段階でそれなりのゲームプレイの動画を見れたので、インゲーム音楽に関して言えば、直接そのマテリアルに対して作曲できました。シネマティックなカットシーンは、ざっくりとしたアニマティクスを見て作業することが多く、作曲スケジュールのかなり後の方にならないと、ファイナルバージョンが完成して完全にレンダリングされた状態になりませんでした。それでも私たちはストーリーラインやキャラクターに馴染みがあったし、ボイスオーバーは、少なくとも作業に使ったラフカットにシンクしていたおかげで、出演キャラクターの気持ちを中心に作曲するには充分でした。
ゲームのサウンドデザインは、ゲームの作曲に影響しましたか?
BLW: サウンドデザインが、音楽にどのようにブレンドされるかは、ゲームでも従来の映画スコアでも、常に私たちにとって重要な点です。RTSバトルゲームのように弾薬や武装車両、カオス状態などがマップのいたるところに存在するときは、特にそうです。音楽やサウンドデザインやボイスオーバーなど、すべての要素がバランスよく共存できるようにすることが最終目標となります。音楽がプレイヤーを励まし、音楽テーマを通してキャラクターやストーリーが生き生きとしますが、サウンドデザインやボイスオーバーが提供するプレイヤーへの貴重なフィードバックを隠してはいけません。この明確な目的を前に、私たちはゲームプレイ中にインタラクティブスコアがミックスになじむように、Halo Wars 2のオーディオディレクターのポール・リプソン(Paul Lipson)氏がMicrosoftに在籍中に開発したシステムを使いました。このシステムを、Wwiseの音楽サブミックスに適用し、サウンドデザインが激しくなってきたときにミックス中の音楽と衝突すると発生してしまうマスキングや不快音を、一部オフセットするのに使いました。例えば、大量の爆発が発生しているときに、違うサブミックスを使いスペースを確保することで、音楽要素の複雑な状況をプロシージャル処理で抑えることができます。さらに、音楽が完全に排除される状況さえ、考えられます。
ゲームスコアについて、ほかに何か伝えておきたいことはありますか?
GH: このスコアは盛り沢山で、 Haloファンのみんなに発表できることをとても嬉しく、誇りに思っているので、自由自在に聞いてみてください!オリジナルサウンドトラックアルバムは、物理的なCDとして店舗やアマゾンで買えるほか、デジタル版がiTunesストアで購入できます。作曲した我々と同じくらい、楽しんでもらえると嬉しいです!
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