『あつまれ どうぶつの森』全盲プレイヤーを助けてくれるオーディオデザイン

ゲームオーディオ / サウンドデザイン

全盲でも『あつまれ どうぶつの森』をプレイできる!この言葉に多くの人々が衝撃を受け、私でさえ初めて聞いたときは衝撃的でした。このような類のゲームを、目が見えない人がプレイできるとは思いもしませんでした。私自身、こんなゲームをプレイしたことがそれまで一度もありませんでした。だけど可能だと聞いてしまった以上、どうやるのかを調べ、そして当然、自分で試してみるしかありません。親愛なる読者の皆さんは、『あつまれ どうぶつの森』が私にもプレイ可能な主な理由がオーディオデザインと聞いても、驚かないでしょう。でも、その性能の良さには、びっくりするかもしれません。私から詳しく説明させていただきますので、皆さんはリラックスして読んでください。

felipe-vieira-vAulBEZf9Nc-unsplashFelipe Vieira 撮影 Unsplashより

目の不自由な人がプレイできるゲームには、たくさんの聴覚的な情報が必要です。私たちは、ものを見つけられるように、または単に目印として使えるように、何がどこにあるのかを把握しなければなりません。『あつ森』はこれを見事にやってくれます。地形ごとに音が違っていて、砂浜や草むらや広場など場所の違いが分かるだけでなく、環境のヒントも豊富に用意されています。なんと、『あつ森』で風が吹いたとすると、それは風に揺れる木の葉の音が聞こえる単純なアンビエントエフェクトにとどまらないのです。木を揺らす風の音が、その木が島に植わっている正確な位置で、聞こえるわけです。私が知る限り、風の音そのものを使って、1本1本の木の場所を自分で発見できるゲームは、これが初。驚異的です!

目印となるサウンドの作成

その中でも特に感動的で便利なのが、自分で音の「目印」を設定できることで、重要エリアに特定のものを配置するだけで可能です。例えば私の家は南の砂浜の端にあるので、この砂浜を自分の基盤として使えます。そして常に火のついた焚き火を、ちょうど家の左側に配置したので、私は、南部の砂浜を歩けば必ず焚き火の音をたよりに家を見つけることができます。もっと分かりやすくするために自分のお店を焚き火の向こう側に配置して、自分の家を出て、左に回り、右手に焚き火の音を聞きながら歩けば、お店のドアの前に来るようにしました。そして私の島にある博物館の位置が3つ目の例で、川の北側にある滝のすぐ隣りに配置しました。なぜか?この滝はとても大きい音がして検知しやすいので、自然の完璧な目印です。

まだまだ話したいことがたくさんあるので、ご心配なく。このゲームには良心的なサウンドがほかにもたっぷりとあります。私たちがどうやって木々の位置を知るかは、すでに説明しましたが、木とか色々なところから、ものを集める行為について触れていません。と言っても、地面にアイテムが落ちると落下の瞬間に音がする、というだけです。この音のポジションもまた、完璧です。私が木をめがけて斧をふると、その木の果物が木のこちら側に落ちて、切った木自体が反対側に倒れたのが分かることが時々あります。そこまで音のポジションが巧妙にできているわけで、しかもサラウンドサウンドさえ使っていないということもお忘れなく。

ところで採集といえば、風船は?虫や魚や化石の場合は?まあ、風船が一番簡単かな。実は聴覚に障害のある人たちのコミュニティからは、風船が見え始めるずっと前から音が聞こえるようになっている、とクレームが出ていて、これは実際にそうです。風船は飛んでいるときに、非常に独特の音を出します。私たちはその音に向かって移動して、音が大きく聞こえるところまで行き、それがヘッドフォンで中央から聞こえるようにして、あとはパチンコを引くだけです。あまりにも簡単に追跡できるので、一発で何個も風船を割ったことがあります。何度もやり直すこともあるけれど、それはたいがい遠すぎるからか、風船が私の後ろに回ってしまったからです。それでも結局、ゲットできます。

昆虫は、もう少し厄介です。音を出す虫にはミツバチ、ショウリョウバッタ、一番うるさいオケラなどがありますが、逆に多くの虫は全く音を出しません。なので確かにこれは難しい問題です。私たちがたどり着いた方法は厳密にはオーディオに関係しませんが、気になる方のために教えます。目が見えない人が取る戦略は、島の一部を区切ってたくさんの花をそこに植え、切り株を多く残しておくことです。そういったところによく虫が集まるので、行ってアミを振り回せば理論的には何匹か捕まるはずです。

sara-kurfess-hzad7o11p5I-unsplashSara Kurfeß 撮影 Unsplashより

さて、次は魚の話。表(水)面上は、目が見えない人にとって魚を捕まえることは難しいはずです。釣りの手順には、魚の影の前に釣り糸を垂らすこと、と明記されています。断っておきますが、水中の魚は音をたてません。ところが撒きエサを使えば、自分の目の前に、というか非常に近くまで、魚がきてくれます。そしてなんと、エサに使うアサリが、砂にもぐっているときに音を出すのです。アサリが潮を吹くとすぐ場所が分かるので、掘って捕まえます。これも、アサリの場所が一回で当てられず何回かやり直すこともありますが、全然できる範囲です。

ところで魚の音に関して、おもしろい点がいくつかあります。遊泳中は音を出しませんが、エサに魅かれた魚は一連の音を出します。まずウキをつつく音、そしてエサに食いついたときのもっと大きい音、そして最後にリールを巻く音。だけど最後の音が一番面白くて、その理由を説明します。実は釣った魚の大きさによって音が違うのです。小魚は小さな水しぶき、そして大魚は、まあ、大きい水しぶき、といったところです。つまり私たちは、エサを撒き、ウキを自分の周りに何回か投げ入れて、あのおもしろい音が聞こえるまで待つわけです。そして食いついた瞬間の音が聞こえたら、Aボタンを一回押すだけで魚をそのまま釣りあげられます。私たちにとって、撒きエサがないと釣りができない、というのは残念ですが、それでも釣れるだけいいと思います。

では、化石について。残念ながら化石は目の見えない人にとって発見するのがとても難しくて、それは発掘に適した場所から何の音も出てこないからです。ゆえに、少なくとも自分で化石を掘り出すという意味では、私に言えることはあまりありません。ところが、次は、この問題さえも解決してくれるある方法についてです。

オンラインで友達と遊ぶ

聴覚的にすごいことの次の話題は、友達とオンラインで一緒に遊ぶときの話です。これ以上良くならないと思うくらい満足していて、強いて言えば文字を音声に変換する「チャットナレーション」があれば嬉しいけれど、可能性は低いと思います。いずれにせよ、自分にとっても友達にとってもオンラインでやり取りするのが楽です。自分の島で誰かが何かをすると、それが音ですべて分かります。もちろん超人的なほどではないけれど、聞こえる範囲がかなり広いです。そんなの大したことじゃない、とあなたは思うかもしれないけれど、本当に多くのゲームが、オンラインゲームでさえも、友達が近くにいても、私や私の敵に直接影響がなければ、友達たちの行動を音で表現してくれないのです。例えば武器を発射したときは聞こえるのに、新しい武器を装填する音などは聞こえない、とか。それが『あつ森』では...全部聞こえる!オンラインの友達が違う道具を取り出したとき、それが聞こえます。友達が木を揺すって、落ちた枝とか果物を拾ったとしたら、それが全部聞こえます。友達たちがやれる行為はすべて、音で分かるようになっています。先ほどの化石採取を友達が手伝ってくれているときなどは、特に助かります。化石は音を出さないので、そういうときは友達に来てもらって化石スポットが見つかったら、そばで手を叩いてもらいます。それは自分が遠くにいても聞こえるので、そこまで行ってから、自分で化石を掘れます。任務達成。

友達から何かをもらうことになっているときも、同じワザを使えます。友達は私の近くに来てアイテムを落としてくれます。落ちたときに聞こえるので、私が拾いますが、もし何かの理由で拾い損ねたりすると、落とした場所で友達が立ち止まってくれて数々のリアクションからひとつ選んで表現してくれるわけで、ちなみにリアクションはそれぞれ独自のサウンドがあります。この仕組みのおかげで、オンラインで本当の協力関係ができ、両方のプレイヤーが目が不自由でも成り立ちますが、化石の例だけは目の見える人が一人必要です。でも目が見えない友達の島に遊びに行ってフルーツを落としてあげたかったら、なんの問題もなくできます。

クレイジーなこだわりの数々

さて、最後になりますが、ここからの部分を私は愛をこめてクレイジーな節と呼びたいと思います。今までたくさんのことを説明しました。すごいことばかりでしたが、もう一回びっくりしますよ、いいですか?『あつ森』で誰かが歩いていて、その人がデフォルトの靴から履き替えると、聞いただけでも分かるって知っていましたか?そうなんです。地形ごとの音が存在しているだけではなく、履いている靴によっても、音が変わるのです。ウソではありません。個人的には靴の音を全部覚えていないので、まだ、どの靴がどれ、とは言えないけれど、自分自身の靴で本当に体験したんです。やられたね。

見事といえば、まだあります。ちょっと、雨の話を。『あつ森』で雨が降ると、すべてが変化します。そう、すべて。風に揺れる木の葉の音は、雨があたると違ってきます。下に何か落ちたときも、地面が水浸しになっていれば音が変わるし、同様に自分の足音も変わります(信じていいよ、雨の中を飛行機から降りて濡れた飛行場を歩いて横切るのは、明らかに違うから)。それだけではありません!テント内や屋内では、屋根を打つ雨の音が聞こえます。さらに、その雨音が屋外にいても聞こえるので、理論上は雨が降っている方が、建物やテントを見つけやすい!もう一度言わせてほしいんだけど、ウソじゃないんです。これは本当に驚異的なゲームです。

以上です。目の見える人が『あつまれ どうぶつの森』について聞きたいであろう質問のすべてに回答していませんが(例えばOCR(光学文字認識)をどうやって使いこなすかは、詳しく説明していません)、オーディオ関連の疑問は答えました。今度、自分の島を訪れたとき、ちょっと目を閉じて耳を澄ましてみて。何が分かるのか、聞いてみて。『あつまれ どうぶつの森』は本当に多くのAAAゲームのオーディオデザインを凌駕しているので、是非ともみんなに聞いてもらいたいです。

ブランドン・コール(Brandon Cole)

ゲームアクセシビリティ アドボケイト兼教育者

ブランドン・コール(Brandon Cole)

ゲームアクセシビリティ アドボケイト兼教育者

ゲームアクセシビリティの推進や啓発活動を行い、コンサルタントとしても活躍。情熱的に仕事に取り組み、何事にも熱意を示すように心がける。ブログでもライブストリームでも、仕事の各局面で同じエネルギーを発揮。

www.brandoncole.net

www.youtube.com/superblindman

 @superblindman

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